お薬の副作用に「無気力」なんてのはないはずなんだけど、いちど読書三昧な日々に溺れてしまうとパソコンに向かうのにかなりの気合が必要だわ。9月は〈ワニ町〉シリーズにハマってしまったせいもあるなぁ。もう次巻が待ちどおしくて立ち止まれない。
そんなわけで、すっかり涼しくなってきたところでまたまた積読を増やそうじゃありませんか。
まずはちょっと気の早い感じもするコージーミステリ。
『A Chapter on Murder』 by Sue Minix
シリーズ:The Bookstore Mystery #3
カテゴリ:コージーミステリ
犯罪小説作家のジェン・ドーソンはひょんなことから故郷の町リドルトンの書店を受け継ぐことになった。執筆と書店経営だけでもてんてこまいのところへ、ある日店の外に男性の死体が。彼のポケットにはジェンの住所が書かれた紙が入っていた。
素人探偵も板についてきたとはいえ、こんどこそ大ピンチ?! 親友ブリタニーと愛犬サヴァナに助けられ、ジェンは真相にたどりつけるのか?
はやくもクリスマスイメージのカバーがいかにもコージーらしいですね~。こういう小さな田舎町の独立系書店がどうやって営業を続けていられるのかは永遠の謎にしか思えませんが、コージーには書店設定多いですね。やっぱり読書好きはなんだかんだリアル書店が好きだし、たとえうんちくを語らなくたってその雰囲気だけでも呼吸したいからかな。
今月はリチャード・オスマンの〈木曜殺人クラブ〉シリーズ新刊『The Last Devil to Die』も発売。このシリーズはすでに直前の3作目まで翻訳が出ているので、こちらも近いうちに翻訳されることでしょう。
この結末は感動的なのか、それとも背筋が凍るのか?
『All Our Lies are True』 by Lisa Manterfield
シリーズ:non
カテゴリ:サスペンス
アビー・カークパトリックは長年のあいだ、「生き残った者の罪悪感」をかかえて生きてきた。6歳のとき、双子の妹キャシーが姉妹の寝室から跡形もなく姿を消してしまったのだ。解決されることのなかった行方不明事件はその後もずっと家族に影を落としてきた。
児童心理学者として新しい人生を歩み始めたアビーは、ひとりでも子供を救うことができたならば、キャシーを失ったことによる心のしこりを少しはほぐせるかもしれないと考えた。
ところがキャシーの遺体が発見されると、アビーの家族はたちまちメディアに執拗に迫られるようになり、父が容疑者として追及された。ついにアビーはあの現場に立ち返り、真実をあぶりだすことを決意する。だが隠されてきた秘密をひとつひとつ解きほぐしていくうち、深いきずなで結ばれた家族がじつは犯人をかくまっているのではないかと思えてきた。
紹介文だけでもう犯人がわかってしまいそうな展開ではありますが、どんな事情があって家族が悲痛な決意をしたのか、その秘密を抱えてきた年月から切ない結末が見えてきそうで、感動するかガッカリするかは読んでみないとわかりません。
このほかにもアン・クリーヴス『哀惜』につづくマシュー・ヴェン刑事の3作目となる『The Raging Storm』、ジェイムズ・パタースンとマイク・ルピカによる共作の新シリーズ『12 Months to Live』も注目です。
結局のところ「完璧」なんて人間には手の届かないものなのかな。
『Neon Nights』 by Anna Mocikat
シリーズ:non
カテゴリ:SF
完璧な社会が実現したと謳う「夢の街」ことオリンピアスで、人々がつぎつぎに死に追い込まれていた。たんに殺されただけではない。体を切り刻まれ、神経とつながったインプラントを拡張機能もろともむしり取られていたのだ。シリアルキラーのしわざというより、高価な拡張機能を闇取引する犯罪シンジケートのやり口だ。
組織犯罪を得意とするサイロ・フェレイラ=ヌネス刑事は相棒のケイト・スペイダーとともに、治安の悪さではこのメガシティでもっとも悪名高いオールドタウンに分け入っていく。そこを牛耳るのは、あらゆるものがコントロールされた完璧社会の網の目を巧妙にすりぬける術を心得た黒幕たちだ。
犠牲者のひとりとなった人気俳優が意外な手がかりを提供してくれた。テレビ画面で輝く笑顔を振りまいていた彼は、オールドタウンの売春宿が集まる地区で驚くべき二重生活を送っていたのだ。はたして彼はたんなる「被害者」なのか?
サイロとケイトが高級ペントハウスで暮らすエリートたちの闇にせまって命を狙われると、オリンピアスの街を守るはずのサイボーグ軍団が乗りだしてくるが、彼らを信じていいのか、それとも・・・?
2095年の世界を舞台にした〈Behind Blue Eyes〉というシリーズ4部作のスピンオフ作品だが、これだけで完結したストーリーになっている。最先端テクノロジーの恩恵を受けるのはいつだってエリート層からだし、たとえ庶民レベルに普及してきても最下層はどうしたって取り残される。そんなディストピアにも正義を信じる警察官がいると思いたい。
リチャード・モーガン原作、ネトフリで人気のドラマ『オルタード・カーボン』にも通じるディストピア×ノワール。
さて、この夏はまた一段と暑さ厳しい3ヶ月でしたね。SDGsを持ちあげるのは結構だけど、そろそろ本腰入れていかないとほんとに地球が沸騰しそう・・・。
そんな未来を明るくしようとする提案のひとつとして書かれたこちらの作品、大ボリュームに思わずひるんでしまいそうですが、さまざまな角度から人類の英知を上手に生かすためのヒントがたくさん! ぜひ秋の夜長に手に取ってみてくださいな。