つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2023年10月~

ようやく朝晩は涼しくなってきましたが、昼間晴れているとまだまだ半そでで過ごせちゃう私はどこまで暑がりさんなんでしょうか。

去年は病気療養があって着物を着る気にもなれませんでしたが、今年こそは着物であちこち出かけたい!と思っているのに、この暑さでは家のなかで着付けの練習もろくにできません。困ったものです。

 

さあ今月もコージーミステリから。

『Over My Dead Blog』 by Sarah E. Burr

シリーズ:Book Blogger Mystery #1

カテゴリ:コージーミステリ

 

 書評ブロガーのウィニーの手元にはレビューを依頼された本が山積みになっている。とはいえ、映画俳優になった双子の弟ストライダーが泊りにくるとなれば、まずは離れていたあいだの近況報告が優先だ。ところがウィニーの家の外で地元の記者が殺されているのが見つかってストライダーが容疑者になってしまっては、おしゃべりしてもいられない。

 積み重ねてきた読書経験、それもとりわけ愛するミステリー小説で培った捜査技法と、持ち前のコンピュータスキルを駆使して暗号のような手がかりを解き明かしていくウィニー

 

 最近はYouTubeTikTokで本を紹介するインフルエンサーも増えてきて、ふだんあまり本を読まない層にはそのほうが手軽なのだろうけれど、活字媒体の紹介は活字で読みたいのが元からの読書好きというものでしょう。どうやら版元から本を贈られてレビューを書くほどの人気ブロガーらしいウィニーだけど、フォロワーは全国に散らばっているだろうから片田舎の事件捜査に協力してもらおうにもあてにできそうにないし、だとすると自力で調べるしかない。そこにどんな新味がでてくるのかがお楽しみ。

 

 そろそろコージーミステリ界隈ではクリスマスをテーマにした作品がこれでもかと出てくる季節。カバーを並べて見ているだけでも気分が盛り上がってきますね。また別記事で特集してみようかな。

 

お次は車いすユーザーの刑事さんが活躍するスリラー。

『The Puppet Maker』 by Jenny O’Brien

シリーズ:Detective Alana Mack #1

カテゴリ:スリラー

 

 その紙切れは日記のページを破り取ったものらしかった。薄い鉛筆で書かれているのは子供っぽい丸みのある文字だ。「この子の世話をお願いします。この子と私の命を守るため、私のことを探さないでください」

 ダブリン郊外の小さな海辺の町クロナビーの警察署に足を踏み入れたアラナ・マック刑事の目のまえには、床に座りこんで泣きじゃくる2歳の少女がいた。地元スーパーに置き去りにされていたという少女はキャシーと名乗った。手がかりは紙切れ1枚。

 事故にあって車いすユーザーとなったアラナは突如としてキャシーの世話という重い責任を負ったうえに、少女の母親を探し、それとまた別の失踪事件まで担当することになった。引退した食料雑貨店の店主が自宅から姿を消していたのだ。

 元夫で小児精神科医のコルムの助言を得て、キャシーが描いた絵のなかの真っ暗な窓の向こうにある闇の正体を知る。少女は自分が住んでいた家を恐れていた。

 

 身体に障害を持つ捜査官と言えばジェフリー・ディーヴァーの生みだしたリンカーン・ライムが真っ先に思いうかぶ。ほぼ寝たきりの彼に比べれば車いすで動きまわれるだけ行動に制限の少ないアラナがどうやって幼い少女を守り、いかに頭脳を働かせて事件を解決していくのか、シリーズの今後も含めて期待してます。

 

今月はこのほかにも、一風変わったホームズパスティーシュの〈クトゥルー・ケースブック〉4巻目となる『Sherlock Holms and the HIghgate Horrors』(ジェイムズ・ラヴグローヴ)、ホームズに比べてなかなか見かけないポアロもののパスティーシュ『Hercule Poirot's Silent Night』(Sophie Hannah)も発売されています。

 

そして最後はSF、だけどちょっと哲学的? こういうのはスペキュレイティブ・フィクション? ソート・プロボカティブ? というのでしょうか。

『The Before and The After』 by Catherine Sequeira

シリーズ:non

カテゴリ:SF

 

 〈それ以前〉と〈それ以後〉に連なる出来事をふりかえってみても、何もかもが灰燼に帰したのがいつのことだったのかを特定するのは不可能だ。

 「ウィープス(嘆きのとき)」のせいですべてを失ったトレーダーは業火に焼きつくされたカリフォルニアの山麓を離れ、洪水に洗われた州会議事堂にいったん落ちついた。〈それ以後〉の圧倒的な孤独を逃れて生きる目的を探そうと、北カリフォルニアに点々と残った居住地を巡った。はじめのうちはよかったが、どうにか持ちこたえていた都市のひとつが灰の山になっているのを発見してからは雲行きが怪しくなっていった。台頭してきたカルトの指導者を追いかけるように廃墟をたどるうち、トレーダーは不確かなことばかりの世界でどこまで生きる意味を求めたいのか、手探りで進んでいく。

 

 ディストピアというよりはポスト・アポカリプスものですが、大火や洪水など気候変動によって引き起こされると予想される大災害のその後の世界を人間はどう生きるのか、そろそろ真剣に考えたほうがいいのかもしれないですね。

 

さて10月と言えば、『The Best American 〇〇』という傑作短編集が毎年のお楽しみ。私が気にかける〇〇はもちろんMystery & Suspenseと、Science Fiction & Fantasy。今年のゲストエディターはそれぞれリサ・ウンガーとR・F・クァンですってよ。

 

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