つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2023年2月~

はい、2月ももう終わりですね~

この調子ならあと数週間で今年も終わりそうな勢いです(体感)。やりたいこともやらなきゃいけないことも、油断してるヒマなんてないはずなのに……なのに……

 

さ、今月も読みたい本は続々と。

『Six Sweets Under』 by Sarah Fox

シリーズ:True Confections Mystery #1

カテゴリ: コージーミステリ

 

 ハリウッドの女優として夢のような7年間を過ごしたベッカ・ランサムは故郷のラーチ・ヘイヴンにもどってきた。北米のベニスとも呼ばれるこの町は道路よりも運河、車よりもゴンドラが多く、おとぎ話から飛び出してきたようなかわいらしいコテージが魅力的だ。ベッカはここで、祖父母が守ってきたチョコレートショップ〈トゥルー・コンフェクションズ〉でショコラティエ修行に励むことになった。

 ベッカがチョコづくりの一方で友人たちと旧交を温めるあいだにも、町は年に一度のゴンドラレースの話題で盛り上がっている。観光客を呼び寄せる重要なイベントに町じゅうが浮かれているというのに、その観光客を毛嫌いしているアーチー・スミスは妨害しようとする。

 イベントの実行委員を務める祖父ポップスと口論になったのちに、アーチーの死体が運河に浮いているのが見つかり、ポップスが真っ先に疑われた。となれば、ベッカも黙って見てはいられない……。

 

 カナダ生まれのコージーミステリ作家さんの新シリーズ。これまでパンケーキ屋さんやライブラリー・パブを舞台にしたコージー作品が好評らしいので、チョコレート屋さんも楽しみです。祖父母の名前がロリーとポップスでロリポップなのもコージーらしいお遊びで、ついニマニマしてしまいます。

 

こちらは社会派、と紹介しようとして、ミステリなんてだいたい社会派なのでは、と思ったり。

『Blood Mothers』 by Gaye Maguire

シリーズ:DS Kate Hamilton Crime Thriller #1

カテゴリ:スリラー

 

 社交界で名を知られた裕福な女性がダブリンの自宅で死んでいるのが見つかったのが、大量殺人の始まりだった。そこからさらに無関係と思われる5人が無残に殺された。

 部長刑事ケイト・ハミルトンは持ち前の聡明さと野心でたちまち被害者どうしの関連を探り当てた。彼らはアイルランドで1980年代から横行する違法な養子縁組にかかわっていたのだ。

 古い因習が根づいた社会では、未婚の母の存在は一族の恥とされる。ひそかに生まれた赤ん坊たちは養子にだされることになるが、そこで一儲けをたくらむ悪人が優先するのは子供の幸せなんかではない。

 数十年もたった今になって、養子縁組にからんだ人々に復讐しようとしているのはだれなのか。捜査を進めるうちに自分自身が被害者や犯人と個人的なつながりがあると知ったケイトは、自分の身にも危険が迫っていることに気づく。

 

 長年テレビ界でプロデューサー/ディレクターとして活躍してきた作者さん、子供のころからミステリ好きで余暇として執筆をしてきたのが、コロナ禍でおこもり生活がつづくなかでついに書き上げたのが本作ということで、これがデビュー作です。

 ヨーロッパでも未婚の母は冷遇されてきた歴史があり、生まれた赤ん坊を養子に出すことはめずらしくなかったというのは聞いたことがありますが、やっぱりそれが不名誉なことと認識されているからには隠したい人が多いだろうし、そこには悪いことを考えるやつにつけこまれる隙もできてしまうんですよねぇ。そしてDNAから血縁者を見つけるのも手軽になってきた現在、子供のほうはそりゃ実の親を探したい。日進月歩の科学技術の恩恵にあやかりたいなら、それに見合った倫理観とか社会的合意とかをアップデートしていかなきゃダメなんだよな~。

 

 今月はジョナサン・ケラーマンの〈アレックス・デラウェア〉シリーズ#38『Unnatural History』、C・J・ボックスの〈ジョー・ピケット〉シリーズ#23『Strom Watch』も出ましたね。あちらでは息長くつづいているシリーズがとちゅうで翻訳が止まったりするの、ほんとなんとかならないものかしら。

 

今月のSFは短編集、それもオムニバス。

Afterglow』 by Grist(Ed.)

シリーズ:non

カテゴリ:SF

 

 アフロフューチャリズムやホープパンク、ソーラーパンクといった最新ムーブメントに触発された作家たちによる、気候変動をテーマにした12の短編を集めた作品集。ディストピアものというよりも、この地球の危機に際してこれまでの対立や確執をいったんわきにおいて協力することができたら、どんな未来が描けるのかというところを焦点にしているらしい。

 現実世界の困難にフィクションはどのように貢献できるのか。

 

 このところディストピアものは大量に目にするようになってきてますが、明るい未来を描いたものってそれほど見当たらない……? フィクションなんだから「そんなことできるかい」と一蹴することなく、これができたらこうなれる、という可能性をどんどん示してもらいたいし、それをきっかけに現実世界でもいろんな可能性をはなから無理と決めつけずに考え、試していけばいいのに、と願っています。

 

 

 お仕事のほうがいよいよ大詰めにかかってきて、あせる気持ちとはやる気持ちがごちゃまぜな今日この頃。不安定な体調をなだめつつ、あと1か月がんばります!

 

 

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