つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2023年12月~

みなさま新年あけましておめでとうございます。

今年もほぼ月イチで洋書の新刊を紹介していくつもりでおります。どうぞ気長におつきあいくださいませ。

 

 

 

『Maternal Instinct』 by Becky Masterman

シリーズ:non

カテゴリ:サスペンス

 

 アルシア・デミングは自分に言い聞かせた。“思っていることを悟られてはだめ。身を守るにはそれがいちばんなのだから”。

 亡くなった夫の遺言にしたがって、夫の連れ子だったハルとその妻グレース、娘のシャイラが同居することになった。広い家を独り占めしていたアルシアにしてみれば、肩身の狭い思いをすることになるが、しかたない。ハルがすべてを相続したのだから。

 気難しい義母の世話をするための同居など望んでいなかったグレースだが、シャイラの将来を考えて精一杯のことをしようと決意した。家は広いし、高級住宅街にあって申し分ない。義母に嫌われていることくらい、我慢できるはず。

 同居を始めてみると、アルシアはとてもいい人だった。夫も近所の人たちもそう言っているし、やがてシャイラもそう言うようになった。それなのに義母を信用できないなんて、わたしの何がいけないの? だけどわたしの中の本能が“アルシアは危険だ”と叫んでいる。わたしが夫と娘を守らなければ、きっと後悔することになる・・・。

 

 FBI捜査官を引退したブリジッド・クインを主人公にしたスリラーがエドガー賞やアンソニー賞の処女作部門で最終候補まで残った作家さん。このシリーズ、1作目が『消えゆくものへの怒り』としてハヤカワ・ミステリから刊行され、Amazonの評価も高いのになぜかつづきは翻訳されなかったようなのが謎です。

 本作はスタンドアローンでもあり、あらためて紹介されてもいいのではないかと思います。

 

 

 

 

『Death by Demo』 by Callie Carpenter

シリーズ:Home Renovation #1

カテゴリ:コージーミステリ

 

 夫とともに住宅建設とインテリアデザインの会社を経営するジェイミーは、自分たちは完璧なカップルだと信じていた。しかし彼の浮気現場を押さえてしまったことから離婚することに。結婚前の約束により、財産分与で手に入れたのは歴史はあるが荒廃した家一軒のみ。リノベーションするにはお金もかかるし退屈な作業でもあるが、気を取り直してこれ以上悪くなることはないと考えることにした。

 ところが、比較的新しくリノベーションされた壁の中から死体が見つかった。いったい誰が殺したの? どうして壁に塗りこめた? 犯人は家の以前の所有者か、それとも元夫か? 事件現場とされてしまったことでさらに作業が遅れることに業を煮やしたジェイミーは自ら犯人捜しを始める。

 

 日本では古い建物は取り壊して新しく建て直すことが多いけれど、欧米はリノベーションをくりかえしていくほうが多い、という知識はある。でも石造りのものはともかく、一般の住宅は木造に漆喰だったりもするのに、リノベーションにも限度があるのでは?と前々から思ってた。それでも修理しながら住み続けるのは当たり前のことらしく、コージーミステリにもリノベーション業者を主役にした作品がわりと多いのですよね。

 ま、古い家にはいろんなものが隠されていたり、閉め切られたまま忘れ去られた部屋があったりしがちなので、ミステリの舞台にはぴったりなのでしょう。新しいシリーズはいつでも大歓迎です!

 

 

 

 

『A Blanket of Steel』 by Timothy S. Johnston

シリーズ:The Rise of Oceania #6

カテゴリ:SFスリラー

 

 気候変動による環境悪化を逃れてフロリダ沖に作られた海底コロニー〈トリエステ〉は地上の超大国にたびたび脅かされている。かつてスパイとして働き、いまは〈トリエステ〉の首長を務めるトルーマン・マクラスキーはこれまでにも各国からの介入をかわしてきたが、こんどの敵はかつてないほど手ごわい――ロシアの暗殺者だ。この戦いに勝たなければ、海底コロニーに住む人類に未来はない……。

 

 気候変動にどう対処していくかについて、とにかく全人類が結束して地道に努力していく道を描いたのがキム・スタンリー・ロビンスン『未来省』なわけですが、本シリーズでは海底に居住可能なコロニーを築くという方法がとられています。世界中が協力したわけではなく、ある特殊な技術を開発したエンジニアたちを中心に作られたものらしく、既存の大国からは目の敵にされているのか、スパイが送りこまれてきたり技術が盗まれそうになったりしていて、その都度トルーマンの活躍で乗り切ってきたようです。6作目となる本作の敵は「ロシアの暗殺者」。地上はあいかわらずの権力争いをしているのでしょうか。これも一種のホープパンク作品として興味を引かれるところです。

 

 世界を見わたせば先の見えない混迷が続いて不安が増すばかりではありますが、目のまえを見れば日々小さな喜びもそこそこ大きな喜びもあるのが救いですね。

 昨年はこのブログで細々と撒いてきた種がひとつ芽を出しました。これからもいくつもの芽が出るように。そしていつかかわいい花が咲くように。地道に続けていきます。本年もどうぞよろしく。

 

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