たったの2,3日の違いなのに、2月は短いですね!
まずはコージーミステリから。
『Murder at North Pond』 by London Lovett
シリーズ:Frostfall Island #1
カテゴリ:コージーミステリ
大学で経営学を学んだアンナ・セントジェームズは、まさか自分が下宿屋を営むことになるとは想像もしていなかった。東海岸の沖に浮かぶ小島、フロストフォール島で下宿屋〈ムーンリバー〉のオーナー兼大家となったアンナは、個性豊かな下宿人たちをいまでは家族のように思っていた。
島には警察組織がないため、海賊との戦いを再現したイベントの最中に死んだ男性について調べることになったアンナ。しかし解くべき謎は死因だけではなかった。下宿人になったばかりのナサニエル・スミスのするどいまなざしは何を意味してるの?
2017年のデビューから4年あまりのあいだに30作品以上も発表している、なんとも精力的な作家さん。どれも200ページ前後と短めのコージーミステリとはいえ、ものすごい勢いですね。分厚くて内容もヘビーな作品のあいまには、こういうさらりと軽い作品が欲しくなるんです。
クレオ・コイルの〈コクと深みの名推理〉シリーズ『コーヒーケーキに消えた誓い』に続く19巻『Honey Roasted』が登場。こちらは黙って待っていればきっと翻訳されるはず、と信じてる。
先月『チョコレートクリーム・パイが知っている』が出たばかりのジョアン・フルーク〈お菓子探偵ハンナ〉シリーズ最新刊は『Caramel Pecan Roll Murder』、28巻目になります。こちらはやや時差があるものの、やはり順調に翻訳されているのはうれしいですね。
続いてスリラーを。
『Seven Minutes Later』 by Bonnie Kistler
シリーズ:-
カテゴリ: スリラー
ファッション系総合商社〈クローディーヌ・ド・マーティノー・インターナショナル〉で働くふたりの女性。ひとりは服も髪も常にビシッと決めている人事部長ルーシー。だが、人もうらやむ成功を成し遂げた彼女には、なんとしてでも守り抜かなければならない秘密がある……。
もうひとりは法務部門で働く弁護士シェイ。いつもみすぼらしい格好をしているのは金欠だからだが、彼女の抱えている問題はお金のことにとどまらない。完璧だと思っていた結婚生活はこじれにこじれてしまっていた。
ある夜、残業を終えて帰宅しようとする彼女たちが同じ時刻にエレベーターに乗り合わせた。だが30階のオフィスから1階のロビーに下りるまでのあいだに、故障により閉じこめられてしまう。ようやく救助隊が到着してドアが開けられたとき、ひとりは息絶えていた。もうひとりは「彼女が自殺した」と言うのだが……。
前職は弁護士だったという著者は、勤務先のオフィスビル内を移動するのに頻繁にエレベーターを使っていて、そこに閉じこめられることを想像しては恐怖にとらわれたという。ただし、恐れたのは空気がなくなることでもなければ高いところから落下することでもない。乗り合わせた誰かに危害を加えられるかもしれないという恐怖だったそうだ。そんな妄想(?)から着想を得た本作は、密室ものでもあり、いわゆる「信頼できない話者」が語る物語でもあり。
翻訳が途絶えて久しいジョナサン・ケラーマンのアレックス・デラウェア・シリーズも順調に新作が出ています。今月は37巻『City of the Dead』が発売。
誰もが話題にしていた感のあるサラ・パレツキーのV.I.ウォーショースキーもまだまだ続いています。最新刊『Guardian Angel』も今月発売です。
SFFはやっぱり絞りきれなくて2作!
『Ice Crash: Antarctica』 by Lynda Engler
シリーズ:-
カテゴリ:気候変動SF
地震による刺激のため、ついに南極西部のスウェイツ氷河が崩壊した。マクマード基地で越冬していた地震学者キャスリンは緊急避難をせまられる。
氷河崩壊による海面上昇は津波となって各地へと広がっていった。フロリダにいたキャスリンの娘も、ボストンにいた夫と息子も、この災害を生き延びることができるのか。家族はふたたび互いをとりもどすことはできるのか。
今月発売されたということは、著者が構想を練っていたのはもっと前のはずですが、奇しくも昨年末、この作品の発端の舞台となったスウェイツ氷河に巨大な亀裂が発見され、5年以内には氷床が崩壊する可能性があるそうです。
YA作品を多く手掛けてきた著者らしく、本作はとくにYAとは謳ってはいないが各章はじめにミニ知識的なページが入れてあるそうなので、大人でも科学的知識を確認しながら読み進められそう。いわゆる「エデュテインメント」と言えるのかな。
『Chosen』 by Shade Owens
シリーズ:The Immortal Ones #1
カテゴリ:ディストピアSF
日々懸命に働くルータムの住民は、年に一度の選抜抽選会を楽しみにしている。選ばれさえすれば、永遠の命が手に入り、オリンパスに住む「エリート」側の人間になれるのだ。エリートたちのぜいたくな暮らしはすべて、ルータムの住民の労働に支えられている。だからこそ誰もが選ばれる日を待ち望んでいる――17才のシルバースタシア・ブラックウッドをのぞいて。
その日、シルバーのとった行動に誰もが驚いた。エリートたちの住む町で、彼女は何を見、何を知るのか。
幕開けは『ハンガー・ゲーム』を思わせる展開で引きこまれるし、シリーズの1巻目ということでこれ1冊では全然完結するようすはないけれど、手を出さずにはいられないですね。ちなみに次作『Evolved』も、この3月には発売される予定になっています。