つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2021年8月~

すっかり遅くなってしまいましたがまだ8月のうち! 間に合ったことにする!w

 

 『Death in Castle Dark』 by Veronica Bond

シリーズ:Dinner and a Murder Mystery #1

カテゴリ: コージー

 

 あやしくも魅力的な雰囲気あふれる古城で上演されることになったマーダーミステリに出演するという夢がかなったノラ・ブレイクは、自分の演技でこのショーに爪痕を残すつもりだ。こんなすてきなお城で賄いつきの住みこみの仕事というのもわくわくする。

 ところが、出演者仲間で被害者役の俳優が本当に死体になって発見されてしまい、ショーは中断することに。1日も早くショーを再開するため、そして次なる被害者にならないためにも、犯人を捜しださなくては……。

 

 参加型演劇とでも呼べそうなイベントとして人気が高まってきている「マーダーミステリ」、日本では(というか私が見聞きしたことのある東京開催のものは)イベント会場にセットを組んで行われることが多い印象ですが、本物のお城や古いホテルが会場だったらそりゃ盛り上がるでしょうね!

 新人作家さんのデビュー作のせいか情報が少なくて、このシリーズの主役が俳優のノラだとして、〈ディナーと殺人〉というシリーズ名からは、このキャッスル・ダーク城がずっと舞台になるのか、それともノラがあちこちの劇場や撮影現場で事件に出くわしていくのかは不明ながら、気になるシリーズの登場です。

 

 

今月はほかに、私イチオシのミランダ・ジェイムズ〈Cat in the Stacks〉シリーズ14巻『What the Cat Dragged In』や、ルイーズ・ペニーのガマシュ警部シリーズ17巻『The Madness of Crowds』も発売になっています。ガマシュ警部はランダムハウスから数巻翻訳が出たけれど、その後は・・・残念ですねぇ、評判は悪くなかったと思うのですが。コージーをもっと軽率にwじゃんじゃん出してくれるレーベルがあるといいのに、と思う日々です。

 

 

 

 さてお次はスリラー。

 

 『Gone for Good』 by Joanna Schaffhausen

シリーズ:Detective Annalisa Vega #1

カテゴリ:心理スリラー

 

 20年前、女性たちを次々と儀式的に拘束しては死に至らしめたのちに、彼女たちへのおぞましいラブレターを新聞に投稿したとされる連続殺人犯「ラブローン(失恋)・キラー」は、捕まらないままその後はなりを潜めていたため、人々は彼の脅威を忘れ去っていた。ひとり、グレース・ハーパーをのぞいては。

 昼間は食料品店の店長として働きながら、空き時間には詮索好きな性格を活かして素人探偵仲間と古い事件の掘り起こしに熱中しているグレース。彼女はラブローン・キラーがまだこの近隣に潜伏していて、被害者たちが選ばれた共通項さえわかれば犯人を見つけ出せると信じている。

 身近な人をラブローン・キラーに殺されたアナリサ・ヴェガ刑事は、とある事件現場に駆けつけたとき、最悪の既視感に襲われた。シカゴ警察殺人課がついに解決できなかったあの事件にそっくりな状況でグレース・ハーパーが殺されていたのだ。手がかりを追うアナリサは自らの過去と向き合わされることになる。

 

 連続殺人犯が捕まらないまま年月が過ぎていくと、最初のうちは次の犠牲者が出るのはいつだろうと怯えて暮らす人々も、しだいに忘れていってしまうのはしかたないけれど。ジャック・ザ・リッパーのように何十年もたってしまえば、犯人もきっともう死んでるはず、といろんな憶測もできるだろうが、20年は中途半端でコワイ。まさに世間が忘れたころで、でも遺族にとってはまだまだ「ついこの間」にしか思えない時間。ゲラ読みした皆さんが高く評価しているのも期待大。

 

 最後はSF作品。

 

『Reclaimed』 by Madeleine Roux

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ:SFスリラー

 

 センナが、木星の衛星ガニメデに作られた、ある特定の記憶を消去するための科学的治療を行う施設での最先端治療プログラムに参加することを決めたのは、消してしまいたい過去があったからだ。だが治療が始まってまもなく、消去されるのは痛ましい記憶だけではないことに気づく。処置のとちゅうであらわれる症状が治癒に向かっていることをしめすものだとしても、やはりなにかがおかしい。消したい過去だけでなく、いまの状況や自分自身が何者かわからなくなってしまうまえに、他の参加者たちとともにプログラムの謎を解き明かさねば、センナたちに未来はない。

 

 時は23世紀、バーチャルリアリティはもはやあたりまえ、AIロボットが雑用を引き受け、宇宙旅行もめずらしくなくなった時代を舞台にした、天才を自称する起業家が立ち上げた実験施設に集まった「被験者」たちの脱出劇。ある意味ディストピアものでもある作品。

 

 変異株の登場からさらにやっかいになってきたコロナウィルスとの戦いもなかなかにSF的ですが、社会の在り方みたいな面でもいろいろあぶりだされてきている現状から、作家さんたちがまた新たな着想を得てなんらかのジャンルでくくれるような作品群がそのうち出てくるだろうと思うと楽しみでもあります。それらを楽しむためにも、生き延びなければ。

 

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