つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2021年2月~

 

 『Murder at the Beacon Bakeshop』 by  Darci Hannah

シリーズ:Beacon Bakeshop Mystery #1

カテゴリ:コージーミステリ

 

 浮気した恋人ジェフリーとの別れをきっかけに都会を離れる決心をしたリンジー。子供のころの思い出の地、ミシガン州の湖畔の町でほとんど廃墟になっていた古い灯台を改築してベーカリーカフェを開くことにした。ところが灯台灯台のままにしておきたい保存協会に目をつけられ、開店当日のイベントは反対グループに引っ掻き回されてしまった。

 それに続いて、ジェフリーが新恋人ミアを連れてわざわざやってきた。険悪な雰囲気の中、ミアがドーナツをのどに詰まらせて窒息死してしまった。検死解剖の結果、ミアの血液中からシアン化合物が見つかり、真っ先に疑われたのはもちろん、リンジーだ。なんとか身の潔白を証明しようと話を聞いてまわるうち、この町の黒歴史が掘り返されて……。

 

 コージーミステリでは古い灯台を改装してなにかお店を始めるパターンがけっこうあって、あちらの人たちには郷愁を誘う舞台だったりするみたいですね。灯台といっても、日本でイメージするのは堤の先端に塔だけ建ってるものが多くないですか? だから人里離れた場所という思い込みが、わたしにはあります。でも欧米ではライト“ハウス”というくらいで、灯台守が住む住宅部分も併設されてることが多いせいか、人の行き来もふつうにあって、だからこそカフェやその他のお店をやろうとか思えるのかな?

 著者のダーシー・ハンナはVerry Cherryミステリというコージーヒストリカルなんかも書いていて、コージーな雰囲気づくりはお手のもの、といったところ。安心してマンネリに身を任せられる、ド定番。いくらでもおかわりが欲しいコージーファンにはたまらないでしょう。

 

 

 

 『The Jigsaw Man』 by  Nadine Matheson

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ:スリラー

 

 テムズ川の土手でバラバラに切断された人体の一部が見つかり、連続犯罪チームに復帰したばかりのアンジェリカ・ヘンリー警部は現場に駆けつけた。被害者は複数人で、遺体の置かれた状況はかつての連続殺人犯〈ジグソー・キラー〉ことピーター・オリヴィエの手口にそっくりだった。だがオリヴィエは終身刑で服役中のはずだ。

 次々と同じように切断された遺体が見つかり、やがてその1つがヘンリーの自宅の前に放置されたことから、犯人は被害者をランダムに選んでいるのではなく、何らかの意図でヘンリーをねらっているらしいことがわかった。さらにオリヴィエが脱走し、ヘンリーはそれぞれの連続殺人犯を追うことになる。

 

 PB版が昨年発売され、今回はKindle版の発売。著者のナディーン・マシソンの本職は刑事弁護士。「実例」を山ほど見てきた人ならではの臨場感に期待できそうかな? 紹介文には書かれていないが、ヘンリーが休職していた理由などもあわせてどれだけ奥行きのある作品世界になっているか、楽しみです。

 

 

 

The Echo Wife (English Edition)

The Echo Wife (English Edition)

 

 『The Echo Wife』 by  Sarah Gailey

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ:SFスリラー

 

 マルティーヌはイヴリン・コールドウェルのクローンとして作られた。イヴリンは画期的なクローン技術で科学賞を受賞した科学者だが、クローンを作ったのは彼女自身ではなく、夫ネイサンだ。遺伝的には“双子”であるマルティーヌだが、性格は正反対。ネイサンは優しく我慢強く、従順なマルティーヌを作ってイヴリンと「入れ替え」るつもりだったのだ。

 マルティーヌと暮らし始めたネイサンがある日、突然の死を迎えると、マルティーヌが真っ先に助けを求めたのはイヴリンだった。ネイサンの死の後始末のため、ふたりは協力することになった。それにはイヴリンの“経験”が役に立ちそうだ……。

 

 クローン技術で年齢差もないそっくりさんが作れるようになった、という設定こそSFだが、それ以外はほとんどスリラーというかドメスティックサスペンスというか。それでいてちょっとばかりシスターフッドも? という匂わせを感じるあたりが興味をそそるポイントです。前作でもクィアを主人公に据えた近未来ものだったので、今回もジェンダーに絡んだテーマかな、と。ジェンダーをとりあげるのにSFは向いていそう。昨年あたりから翻訳書でもそんな作品が続いていることだし、このジャンルは注目していきたいところ。

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