つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2020年12月~

 はやくも年末ですね。私はもともと家族そろって在宅仕事みたいな環境にいるので、コロナ渦で外出自粛と言われてもそれまでとほとんど変わらない生活でしたが、それでもやっぱり、この1年は何かをやりそこねたような、不完全燃焼な気分です。とはいえ、本を読むペースは相変わらず。どんどん読んで、それ以上にどんどん積んでいます。

 今年はロマンス作品とのニアミスがありました。ミステリ寄りとされるロマンスレーベル作品をおすすめされて読んでみたら、大好物とはいえないまでも食わず嫌いしていてはもったいないかも、という気持ちになったので、ロマンスに分類される作品にも網をかけてみることにしました。その成果は・・・? ぜひ最後までお読みください!

 

 『Absence of Alice』 by  Sherry Harris

シリーズ:Sarah Winston Garage Sale #9

カテゴリ: コージーミステリ

 

 掘り出し物を見つけるのが得意なサラ・ウィンストンは、離婚を機にガレージセールを商売にすることにした。今回の依頼人アリス・クランドルは、ガレージセールをやると言っただけでまるごと高値で買うという客があらわれたので、サラに鑑定してもらえばさらに値段を吊り上げることができるのではないかと期待している。

 そんなおり、サラの大家であるステラが何者かにさらわれた。犯人はお決まりの「警察には知らせるな」をはじめとしていくつもの条件をつけてきたが、サラの友人ハリエットに相談するなとはどこにも書いていなかった。元はFBIで人質解放交渉を担当していたハリエットなら、警察より頼りになるかも・・・?

 

 SDGsに注目が集まる昨今ですが、リユースやリサイクルを促進する目的で、日本でもフリーマーケットが定着してきましたね。アメリカではもっと前からガレージセールが一般的で、週末になればあちこちでやっています。日本でフリーマーケットというと大きな会場をブースで区切って出店するすたいるが多いと思いますが、本場のガレージセールはほんとに各家のガレージでやるので、日曜日ごとに近隣のガレージを見に行くのを趣味にしている人もいるそうです。

 そんなガレージセールを、より高く、より多く売るためのチャンスにするべく、値付けや広報などのお手伝いをするのが主人公サラのお仕事。アメリカで一軒家というと屋根裏や地下室のある家も多く、とにかくなんでも詰めこんであるらしく、ガラクタの山の中にお宝が隠れていることも少なくないのでしょうね・・・。

 離婚した元夫CJが町の警察署長、ということは、ロマンスというよりもいがみ合いが頻発しそうな状況ですが、そこはコージーなので衝突が起きても痴話ゲンカにしか見えないかも?

 

 

 『The Open House』 by  Sam Carrington

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ:サスペンス

 

 浮気した夫ニックが家をでたあと、残された妻アンバーはニックが生まれ育った家でふたりの子供と暮らしていたが、新たなパートナーと出会って再出発しようと気持ちを切り替えた。そこで家を売る準備をはじめたアンバーだが、立地は申し分ないにもかかわらず、なぜか内覧に来る客がひとりもいない。近くの空き地に持ちあがっている開発計画のせいなのかもしれないが、誰かがわざわざじゃましているのではないかという疑惑にとらわれていくアンバー。この家でニックを育ててきた義母も何かと口をはさんでくる・・・。

 不動産業者のすすめでオープンハウスのイベントをすることになっても、近所の口さがない人たちにあれこれのぞかれるのではないかと思うと、アンバーは気が気ではなかった。

 ところが、イベントを終えたアンバーの気がかりは心配から恐怖へと変わっていく。やってきた客は13人いたはずなのに、帰った客は12人しかいなかったのだ。

 

 中古住宅の流通事情には詳しくないけれど、欧米では日本ほど「一生に一度の買い物」という意識がなく、売り買いの頻度は多いようです。それだけに、いま暮らしているそのままの状態で見込客に家の中を見せるスタイルのオープンハウスも盛んで、少しでもよく見せるためにわざわざ家具調度を入れ替えたりするホームステージングというのを仕事にする人もいるくらいです。インテリアコーディネーターの1つの形態ですね。

 このオープンハウスという場面設定はときどき見かけますが、やっぱりドラマを生みやすいんでしょうか。自分の家というこれ以上ないくらいプライベートな空間に赤の他人を招き入れるという状況は、考えてみればスリラーの温床ですよね。

 心理学を学んた後に刑務所の矯正プログラムに関わる仕事をしていたという作者だそうで、どれほど恐怖感を盛り上げてくれるのか、楽しみです。

 

 『Zedger:Edge of Zion』 by  Elysia Lumen Strife

シリーズ:Hybrid Genesis #1

カテゴリ:SF

 

 サマーキャンプから誘拐され、とあるバイオテクノロジーの実験プログラムに放りこまれた子供たちのなかで、そこから逃げだせたのはごくわずかだ。その数少ない1人であるマルシは、隠れ住んでいる家のすぐ近くで死にかけていた兵士リヴァイを見つけた。記憶を失っているリヴァイのようすから、マルシはこの隠れ家が見つかってしまったことを悟る。

 リヴァイの手当てをしてやったマルシは、彼が生き延びるには血液中のある成分をコントロールするために必要な装置を手に入れなければならないことを知った。そのためにはあの実験施設に行かなければならない。施設に潜入した2人が見つけた事実は、ふたりの存在以上に彼らを脅かすものだった。

 

 自費出版でSFとロマンスを書き続けている作家の新シリーズが開幕。SFのなかでも宇宙戦争的なものより医療系とかテクノロジー系のほうが好みの私には、こういう設定はワクワクがとまりません。バイオテクノロジーはうまくいけば莫大なお金が動くだけに、陰謀には事欠かないイメージがあります。このシリーズではどこまで壮大な話になっていくのか、見守りたいですね。

 

Layla (English Edition)

Layla (English Edition)

 

 『Layla』 by Colleen Hoover

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ:ロマンス

 

 レイラと出会ったリーズは、彼女こそ運命のひとだと直感した。交際は順調にスタートしたかに見えたが、レイラが不慮の事故で頭部に大けがを負ってしまう。数週間におよんだ入院を経て、身体の傷は癒えたとはいえ、レイラの心は深く傷ついたままだった。

 ふたりの関係を再構築しようと、リーズはレイラを出会いの場となったB&Bに連れていくが、レイラのようすはますますおかしくなっていく。リーズは宿泊客のひとりで同じような境遇にあったウィローと親しくなり、その事情をさらに知るようになると彼女のことも助けたいと思うようになる。しかしそれは同時にレイラのためにはならないことで・・・。

 

 この夏、「ミステリ寄りのロマンス」として話題になった『秘めた情事が終わるとき』の作者による新作。これより先に、『世界の終わり、愛のはじまり』が訳されていますが、こちらはもっとロマンス寄り? な印象で未読です。

 本作は原題がヒメオワと同じく登場人物の名前のみというシンプルなもので、カバーデザインも似た雰囲気なので、もしや傾向も似てるかも、と気になっています。ヒメオワはかなりのイヤミスだったので好みとは言いがたいのだけれど、面白いことはとにかく面白かったので。

 

 

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