もうホリデーシーズンが近づいているせいか、日本でもおなじみのビッグネーム作家たちがぞくぞくと新刊を出しているようです。
そんななか、ここでご紹介するのはあいかわらず私の偏った好みが全開の3冊です(笑)。
『The Thief on the Winged Horse』 by Kate Mascarenhas
シリーズ:ノンシリーズ
カテゴリ:Fantasy/Mystery
ケンドリック家は1800年代初頭から代々、世界的に名の通った人形作りだった。人形が有名なのははただその技巧が優れているというだけでなく、職人によって特別な感情が持たされている。人はその人形に触れると、無上の喜びに満たされることも、妄執を貪ることもできるのだ。だが、人形作りを始めたのが姉妹であったにもかかわらず、その秘技は一族の男たちにしか伝えられていなかった。
ペルセポネはその伝統を破り、人形作りを学びたいと思っていた。あるとき見知らぬ男と出会い、彼がケンドリック家との血縁者として人形作りをしたいと言うのを聞き、これはチャンスだととびついた。ところがある夜、一族に伝わるもっとも貴重な人形が盗まれた。そんなことができるのは秘密の魔法を知るものだけだ。すなわち、盗んだのは一族の誰かということ……?
今年、『時間旅行者のキャンディボックス』で注目を集めた作家の2作目。彼女は心理学者であると同時に、コピーライターや製本工などと並んでドールハウス作者という職歴も持っているそうで、そのあたりが本作の着想のもとなのでしょうか。
前作は登場人物のほとんどが女性であることからフェミニズム小説という一面が強調された感がありましたが、今回も家業とその名誉から閉め出された女性を中心にしていながら、しかしロマンス的な要素も織りこまれているとか。こちらもぜひ翻訳されてほしいですね。
Shadow Sands: A Kate Marshall Thriller (English Edition)
- 作者:Bryndza, Robert
- 発売日: 2020/11/03
- メディア: Kindle版
『Shadow Sands』 by Robert Bryndza
シリーズ:Kate Marshall #2
カテゴリ:ミステリ
ケイト・マーシャルはシャドウ・サンズ貯水池で若い男性の死体を発見した。だが地元警察はたんなる事故死と断定した。しかし、泳ぎが得意だったという彼がおぼれ死ぬなんて不自然だし、そもそも夜中に貯水池なんかで何をしていたのか? ケイトには納得できない。
助手のトリスタンとともに調べるうち、この数年で行方不明になっている人が複数いることがわかった。さらにまた1人、女性がいなくなったため、ケイトたちは彼女を生きて取り戻すために奔走する。
じつはこのシリーズ、ちょうど1年ほど前に1作目が出たのですが、このブログでも紹介していたことに気づきました。なんか見覚えのある名前だとは思ったけど。中身はもちろん、カバーデザインも好きな雰囲気なんです。と言いつつ、まだ前作も読めてないんですが(汗)
ミステリ・ジャンルではこのほか、カササギ《旋風》を巻き起こしたアンソニー・ホロヴィッツの新刊、編集者スーザン・ライランドを主人公とするシリーズ第2作、Moonflower Murdersも発売されました。今回もアラン・コンウェイの作品が関わっているらしく、また作中作で読者を翻弄してくれるのでしょうか。またマイクル・コナリーのハリー・ボッシュシリーズに連なるThe Law of Innocenceも今月発売です。このへんもどんどん翻訳がでてほしいところ。シリーズ作品を途中で止めないで~!
The Malt in Our Stars (A Literary Pub Mystery Book 3) (English Edition)
- 作者:Fox, Sarah
- 発売日: 2020/11/24
- メディア: Kindle版
『The Malt in Our Stars』 by Sarah Fox
シリーズ:Literary Pub Mystery #3
カテゴリ:コージーミステリ
会社合併のあおりを食らって失業したセイディ・コールマンは、ギャンブル依存症の元夫にも別れを告げてヴァーモント州シェイディクリークへとやってきた。そこで古い製粉所を改装して文学パブ〈インクウェル〉を開店した。文学をテーマにしたカクテルが名物の店内ではときおり読書会も開かれ、地元客に混じって観光客もここでのひとときを楽しんでいる。
店で開くイベントにロマンス作家のリネア・ブリスが参加してくれることになった。リネアと彼女の助手マーシーが泊まる歴史あるホテルは、かつては個人所有の邸宅で、その壁の中には財宝が隠されているといううわさがあった。しかし、3階の窓からマーシーが転落死すると、そんなうわさなど消し飛ぶほどの大騒ぎになった。
マーシーの死は隠された財宝と関係があるのか、それともこのまえビール醸造業者を取材に来たカメラクルーの車が荒らされてことのほうに関連しているのか……?
文学をテーマにしたパブ、というのがいかにもコージーですねぇ。都会での仕事を失って地方の小さな町に来たのは伯母がいたからだとか、パブの出入り業者とのもどかしいロマンス要素とか、まさに王道コージーです。
コージージャンルでもおなじみ作家さんたちの新刊もあれこれと出ます。ジャネット・イヴァノビッチのステファニー・プラム・シリーズFortune and Gloryは27作目、昨年末に亡くなったM.C. ビートンのアガサ・レーズン・シリーズ31作目となるHot to TrotはR.W. Greenとの共著となっていて、おそらくこれが遺作となるのでしょう。
さて、「noteを始めました」とお知らせしたのはついこのあいだのことですが、noteの運営会社がやっているcakesのほうでなんともお粗末な失態があったせいで、なんだか信頼関係にひびが入ったみたい……というと大げさな気もしますが、ちょっと距離をおきたいと思いまして、AmebaOwndにお引越しすることにしました。
やりたいことをあれこれ試したいとは思っていますが、このブログはこのままここで続けていくことにしました。今後ともどうぞごひいきに。
AmebaOwndのほうでは「翻訳されてほしい本」の紹介を中心に、読んだ本の感想やエッセイみたいなものを書いております。よろしかったら見ていってくださいませ。
翻訳者KUMYAMのお気に入り (amebaownd.com)