つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2021年1月~

  年明け早々、緊急事態宣言が出てしまいましたね。私はコロナ以前から在宅仕事で家にいる時間が長いせいか、あまり閉塞感など感じないですんでいますが、ステイホームがつらいという声があるのもわかります。こんなときだからこそお家で読書!という習慣ができて、本を読む人が増えてくれるとうれしいな~と思います。

 

 今月はスリラーから紹介していきますよ。

Sweet Water (English Edition)

Sweet Water (English Edition)

 

 『Sweet Water』 by  Cara Reinard

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ: ミステリー/スリラー

 

 サラ・エルスワースは夢に描いたとおりの人生を手に入れていた。幼なじみのマーティンと結婚し、ペンシルヴァニアでも有数の高級住宅街に鎮座する由緒ある豪邸に住んで、将来有望な10代の息子を育てている。

 そんな暮らしが一変したのは、真夜中にかかってきた一本の電話からだった。呼び出されたサラとマーティンが森の中で見つけたのは、涙をこぼしながら茫然とうずくまっている息子フィンだった。そして彼のそばにはガールフレンドの死体が……。

 息子の無実を信じたふたりは全力で彼を守ることに決め、警察への通報はしなかった。しかし、マーティン側の親族による隠ぺい行動があまりに冷血に思われ、フィンが警察についた嘘もいかにも用意周到な気がして、サラは恐ろしくなる。次々と明かされる秘密を目の前にして、サラはこの生活を守るためにどこまで嘘をつきつづければいいのかわからなくなる。

 

 発売前にいわゆるゲラの状態で読んで先行レビューを書いてもらう、という宣伝手法はすっかりおなじみになってますが、この作品は自費出版に近いにもかかわらずものすごい数の先行レビューがついているというのが謎です。しかも評価がすごく高い!

 2016年にデビューして2作を発表したあと、これが久しぶりの作品で、待ち焦がれられていた著名作家でもないのにどういうことなんでしょう? ものすごく気になるじゃありませんか!

 

 今月、サスペンス/スリラージャンルでは、すでに邦訳のある作家さんの新作もチラホラ。私的にはこの2冊が気になる! C・J・チューダーは『白墨人形』『アニーはどこにいった』が出ていますね。 

The Burning Girls (English Edition)

The Burning Girls (English Edition)

 

  リサ・ガードナーのロマンス作品は未読ですが、D・D・ウォレンシリーズの『無痛の子』『棺の女』ともに面白かったです。あのシリーズは他作品も翻訳してほしいところですが、今月発売のこちらはノンシリーズのようです。

Before She Disappeared (English Edition)

Before She Disappeared (English Edition)

 

 

 続いてコージーミステリ! 

 『Suitable for Framing』 by  Lori Roberts Herbst

シリーズ:Callie Cassidy Mystery #1

カテゴリ:コージーミステリ

 

 大都市の新聞で20年以上にわたってフォトジャーナリストとして活躍し、「死人の女王」の異名をとるほどになったキャリー・キャシディにとって、死体と遭遇することは珍しくもなんともないことだった。とはいえ、大失敗を機に故郷コロラドでスキーリゾートを営む両親のもとへ帰って心の傷を癒そうと決めたときには、事件現場や死体とは無縁になると信じていた。

 ところが、リゾート客が集まるパーティの写真撮影を引き受けた直後、事務所の床に倒れて死んでいる女性を発見してしまう。そのそばには血まみれのレターオープナーを手にした別の女性がうずくまっていたことから、新人刑事サンチェスはかんたんな事件としてあっさり片づけようとした。しかしキャリーにはそんな単純な事件ではないことが想像できた。殺されたのは高校時代の同級生で、当時から性格の悪いいじめっ子だった。彼女を殺したいとまで思っていた人は少なくないはず・・・。

 

 長年、高校でジャーナリズムを教えてきたロリ・ロバーツ・ハープストのデビュー作。ジャーナリストとしての視点やティーンエイジャーと関わってきた経験が活かされた設定ということなら安心感がありますね。どうやらペットの犬と猫も活躍するらしく、もしかしてちょっぴりファンタジーというかスピリチュアルな雰囲気もあるのかしら?

 

 そしてこちらも注目。

 〈家政婦は名探偵〉シリーズは4作で翻訳が止まってしまっていますが、あちらではもう39作目が登場。日本の読者はあまり長いシリーズを求めてないの? 

 長いシリーズは飽きられる、なんてはずはありません。 

 〈お茶と探偵〉シリーズが大人気のローラ・チャイルズ、こちら〈卵料理のカフェ〉シリーズも既刊はすべて訳されているという快挙! ついに新刊が出ますよ! 前作から3年も開いてしまったのね・・・と思いましたが、もともと2年に1作くらいのペースだったのか。ぜひ翻訳も続けてほしいです。 

 

  お次はファンタジーを2つ! 

 『House of Bastiion』 by  K.L. Kolarich

シリーズ:The Haidren Legacy #1

カテゴリ:ファンタジー

 

「忘れられた戦争」によって世界が破壊しつくされてから数世紀後、ピーラー、ダラカイ、ボリアル、バスティーオンの4都市を治めるそれぞれの一族はソーン王家との合意によってオリンシアの玉座を支えるお目付け役としてクアドレンを創設した。4つの家系から各世代ごとにひとりのハイドレンを選び、その任にあたることとした。

 晴れて成人し、ボリアル家のアル・ハイドレンとなったルーシア・ティアガンは、着任するやいなやその入り組んだ政治的策略と暗い秘密のとりこになった。やがて彼女はバスティーオンの町の通りで殺された、忘れられた子供たちの共通点を暴きだす。

 ダラカイ家のアル・ハイドレン、ズィーサン・カシムは、ボリアル家が魔術に親しんでいるという迷信をさんざん吹きこまれて育ったせいで、ルーシアがバスティーオンの町にやってくるとすぐに彼女と対立するようになった。しかしその地位をかねてからの敵対者に奪われそうになると、やむなくルーシアを協力体制を組むことになる。行動をともにするうち、ふたりは意外にも自分たちの目指すものが同じであることに気づいていく。

 

 直球の正統派ハイファンタジー。K・L・コラリッチにとってデビュー作ながら、作家のHPに行くと家系図やら地図やらプレイリストやら、凝りに凝った世界観がつくられていて楽しいです。なんならTシャツとか缶バッジなんかのグッズまで用意してある(笑)。『ゲームオブスローンズ』『ウィッチャー』あたりが好きならハマるかも。

 

The Ruthless Lady's Guide to Wizardry (English Edition)
 

 『The Ruthless Lady’s Guide to Wizardry』 by  C.M. Waggoner

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ:ヒストリカルファンタジー

 

 大酒飲みのコソ泥、デラリア(デリー)・ウェルズはツキに見放されていた。しかし、女用心棒の募集広告を偶然見つけた彼女は、得意の舌先三寸でやけに報酬の高いその仕事を手に入れる。女ばかりの集団で、謎の暗殺者から良家のお嬢さまを守るのが任務だ。

 なにを大げさな、とたかをくくっていたデリーだが、くりかえされる攻撃に次第に危機感を募らせていく。どうやら敵は魔法を使いこなし、あちこちに仲間を潜ませているらしい。闘いを重ねるうち、デリーは仲間のひとりウィンに惹かれていく。

 

 タフな女たちが活躍する、ということはシスターフッドものかな? もっと恋愛要素の強いレズビアン小説の面もあるのかも? ともとれる感想がちらほら見られます。タイトルを直訳すると『無慈悲な淑女のための魔法入門』みたいなのがちょっとかっこよくて好き。

 

 最後はロマサスから1冊。 

 『The Wife Upstairs』 by  Rachel Hawkins

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ:ロマンティックサスペンス

 

 アラバマ州バーミンガム。ゲートに守られた超高級住宅地ソーンフィールド・エステートにやってきたばかりのジェーンの仕事は、ここに暮らす金持ちたちのために飼い犬を散歩を代行することだ。けた外れに裕福な彼らは、ジェーンがちょっとした雑貨やジュエリーをこっそりポケットに滑り込ませるくらいのことには気づきもしない。なんなら、ジェーンというのが本名かどうかを確かめもしない。

 だがジェーンがエディ・ロチェスターと出会ってからは風向きが変わった。エステートの中でもいちばん謎の多い人物であるエディは、つい最近妻のベアを亡くしたところだ。ベアは親友といっしょに乗っていたボートの事故で溺死した。裕福でハンサムで憂いに沈むエディは、ジェーンが求めてやまない庇護を与えてくれる存在として申し分ないように思えた。

 エディと親しくなるにつれて、ジェーンは前妻ベアの影におびえるようになる。なにしろ、ジェーンと同じく無一文から出発して、南部のライフスタイルブランドを大成功に導いた伝説の人物なのだ。どうしたって超えようのない壁に立ちふさがれた気分になってしまうではないか。

 

 前妻ベアの死んだ経緯とか、謎に包まれたジェーンの過去だとか、エディにもなにやら事情があるとかが、ロマンスとしてはただの設定なのかもしれないけれど、サスペンスミステリとしてはなにかの伏線なのでは? と思えるあたりが気になるポイントですかね。

 

 

 

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