つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2022年1月~

 新年のご挨拶をするにはすっかり出遅れましたが、今年も細々と続けてまいります。なにとぞよろしくおつきあいくださいませ。

 

まずはカバーがかわいいコージーから。

 

『Littered with Trouble』 by Ery Scott

シリーズ:Whiskers and Words Mystery #1

カテゴリ: コージー

 

 ニューヨークで編集者をしていたルイーザ(ルー)・ヘンリーは、まだ30代のうちに夫に先立たれるとは思ってもいなかった。その悲しみを乗り越えるため、親友の住む遠い田舎町への転居を決心した。そこで長年の夢だった書店を開くのだ。

 ところが、開店を目の前にして店のすぐ近くで身元不明の男性の死体が見つかると、警察はその顔写真を町中に貼りめぐらせた。発見場所としてルーの書店の名前もばっちり書かれている。こんなことで店の名前が広まるのはうれしくないし、なにより夫を亡くしたばかりの身には、この男性の家族がどれほど気をもんでいるだろうと思うといたたまれない。

 ルーは男性が生きている姿を見たうちのひとりでもあり、名前こそ知らないとはいえ、とある本をきっかけに彼と交わした言葉にはいろいろヒントがありそうだ。警察まかせにしないで、できることをしなければ!

 

 カバーの優しい雰囲気も、200ページあまりと短めなところも手に取りやすい感じで好きです。第2巻『Tabby or Not Tabby』も同じく1月に、続く第3巻『Flea the Scene』も2月には出るという過密スケジュールですが、それも楽しみのうち。

 Eryn Scottさんはすでにいくつものコージーミステリシリーズを出していて、Goodreadsの評価も概ね高いのは安心材料と言えそう。このところ北欧ものを中心に重厚長大な作品が多めな翻訳ミステリ界隈ですが、こういう軽い作品もさくっと読めていいと思うんだけどなぁ・・・なかなか出版につながらないのがもどかしい!

 

 

 

 

 お次は私にしては珍しくYA風味のミステリ。

 

『Academy for the Gifted』 by Hudson Warm

カテゴリ:YAスリラー

 

 「ギフテッド」と呼ばれる生徒を集めた名門校グラント・アカデミーに入ることになったベクスレイ・ウィンザーだが、そこでの寄宿生活は期待したような解放感をもたらしてくれるものではなかった。はじめて参加したパーティで、彼女は血まみれになった生徒の死体を発見し、その責任を問われることになる。ベクスレイは二人の仲間とともに真犯人を探し出そうとするが、謎は深まるばかり。下手をすれば学校を追い出されるどころか命があぶない。

 

 才能に恵まれた子供をどこから「ギフテッド」と呼べるのかは難しいところだろうけれど、一般的な教育課程からはみだしてしまう子供たちをどう導いてやるか、選択肢は用意されていてほしいと思っている。学習障害発達障害などで学校の授業についていけない子供への支援は少しずつ充実してきているが、学校の授業では飽き足らない子供への支援はどうか。単純に先取り学習させて偏差値上位校へと誘導するだけでいいはずがない。才能を伸ばしてやるにも、ただ褒めそやしたのでは人間的な成長にゆがみが生じかねない。

 この〈グラント・アカデミー〉はどんな教育をしているのか、というのも気になるところ。

 

最後は超長編!

 

『Pattern Black』 by Sean Platt、Johnny B. Truant

カテゴリ:SFスリラー

 

 メイソン・ショウの父はかつてりっぱな警官だったが、不祥事を起こして〈リバイバル〉社の運営する私設刑務所〈HRO22〉に収監された。そしていま、メイソンもその後を追うことになった。この刑務所からは仮釈放されることはない。ここから出るには死体袋に包まれるか、没入型VRを使った「チェンバー・セラピー」と呼ばれるリハビリプログラムを受けて矯正されるしかない。だがこのセラピーは、失敗すると「パターン・ブラック」状態――アイデンティティが崩壊し、正気を失う――になってしまう。リバイバル社はパターン・ブラックに陥った収監者のその後については秘匿している。

 元ハッカーのカリオペが率いる反体制グループ〈イミュニティ〉はこのシステムを内側から覆そうとしている。メイソンもこのグループに望みをかけるしかない。彼らはチェンバー・セラピーの秘密を解明できるのか?

 

 Sean Plattは自らインディ出版社を立ち上げて複数の共著者とともに精力的にSF作品を生み出しています。本作は800ページ近いボリュームがあって怯みそうになりますが、VRを使ったいわゆる「メタバース」世界の中での人格矯正を私企業が主導してるとか、コワ面白い予感しかありません。

 

 

この1月はコージーミステリの原書を7冊ばかり続けて読了することができました。この先も読み続けるかどうか迷っていたシリーズ2本について、決断できたのですっきりした気分です。2月は去年の積み残しの翻訳ミステリとSFFものをざくざく消化していくつもりです。そして3月はまた洋書に戻ろう・・・などと計画しています。

 

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