つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2017年9月(その2)~

 

Turkey Trot Murder (A Lucy Stone Mystery)

Turkey Trot Murder (A Lucy Stone Mystery)

 

 『Turkey Trot Murder』 by Leslie Meier

シリーズ名:Lucy Stone Mystery #24

カテゴリ:新聞記者、感謝祭、

 一段と冷え込んできたティンカーズコーヴ。今年は静かな感謝祭になると思っていたルーシーだが、池で死体が見つかったとあってはそうもいかず。被害者は裕福な投資家の娘で、麻薬中毒にも苦しんでいたアリソン・フランクリン。警察は過剰摂取による事故と判断するも、ルーシーは葬儀の場で父親の後妻に不信感を覚える。

 

 東京創元社からでているルーシー・ストーン・シリーズ、翻訳は10作で止まってしまっているようですが、本国では早くも24作目、まだまだ人気が衰える様子はありません。今回は人種差別や移民問題などにも踏み込み、コージーながらいま現在の社会の問題を絡めてきているようです。ホリデーシーズンの設定にしては重めかも。

 

期待度:★★★

  

 『A Treasure to Die For』 by Terry Ambrose

シリーズ名:Seaside Cove Bed & Breakfast Mystery #1

カテゴリ:中編、B&B

 16世紀に沈没したガリオン船の積まれていたはずのお宝目当てにやってきた8人組。カリフォルニアの海に面した小さな町シーサイドコーヴの人たちは相手にもしていなかったが、そのうちの一人が殺されると、彼らが泊まっていたB&Bのオーナーであるリック・アトウッドもあせらずにはいられない。首を突っこんでくる10歳の娘はお荷物なのか、それとも意外なブレーンになるのか?

 

 コージーには珍しい男性作家テリー・アンブローズは、これまでにコージー以外のミステリー作品を多数発表しています。本作品の主人公となるのはこれも珍しい父子家庭。表紙に描かれたB&Bの室内がなんとも心地よさそう。

 

期待度:★★★

 

 

 『Mousse Moscato & Murder』 by Jamie Lee Scott

シリーズ名:Food & Wine Mystery #3

カテゴリ:ワイン&料理、ワイナリー、

 ウィラ・フライデーは毎日、仕事の前に町のベーカリーでコーヒーとカップケーキを楽しむことにしている。このところ、その同じ時間、同じ席に座っている男性がいるのに気づいていた。ところが、いつも彼の接客をしていたベッカが店の裏にある駐車場で殺されているのが見つかり……。

 

 フード・ブロガーのウィラを主人公にしたシリーズ3作目。1作目ではブログで収益が出るようになってアシスタントを雇い、2作目では大学生になって家を離れた娘のかわりにそのアシスタントがようやく“使える”ようになり、3作目になってもまだまだ半人前扱い、ってどれだけ世話の焼けるやつなんだと思わなくもないけれど。

 そのブログに載せているレシピとともに、ワインとの組み合わせなどのうんちくも楽しそう。

 

期待度:★★★★

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気になる新刊 ~2017年9月(その1)~

 さて、ちょっと出遅れましたが今月も気になる新刊がたくさん出ますよ。

 『Cherry Filled Charges』 by Jessica Beck

シリーズ名:Donut Shop Mystery #33

 

 町に期間限定でビストロがオープンすることが決まったというのに、料理学校時代からのシェフのライバルがステージで殺されているのが見つかった! もちろん見つけたのはスザンヌだけど、頼みのジェイクは家族の一大事で町を離れているとあって、盟友グレースとともに犯人探しに出動!

 

 コージーブックスでもおなじみ、〈ドーナツ事件簿〉シリーズがもう33作目! 翻訳はまだ5作目までですが、続きもどんどん出してほしいシリーズですよね。

 あちらの読者の中にはさすがに飽きてきたらしいコメントも見受けられますが、これだけ長く続いていながら★平均4.39ってスゴイことですよ。

 

期待度:★★★★★

 

A Deadly Fundraiser (Talk Radio Mysteries Book 4) (English Edition)

A Deadly Fundraiser (Talk Radio Mysteries Book 4) (English Edition)

 

『Deadly Fundraiser』 by Mary Kennedy

シリーズ名:Talk Radio Mystery #4

 

 フロリダの地元ラジオ局でトークショーの司会を務める精神分析医マギー・ウォルシュ。アートセンターでの資金集めのイベントに参加することになり、ラジオ局の仲間たちと宝探しを楽しんでいたのに、見つかったのは今を時めく建築家の死体!

 

 シリーズのこれまでの作品とは違ってちょっと短め111ページの中編。このシリーズでは主人公が元精神科医なので、犯人の心理を探っていくところが面白いのと、マギーの母親で元女優のローラがかつて経験した役のために身に着けたさまざまな知識でバックアップしてくれるのが読みどころ。

 

期待度:★★★

 

Deadly Brew (Dewberry Farm Mysteries Book 3) (English Edition)

Deadly Brew (Dewberry Farm Mysteries Book 3) (English Edition)

 

『Deadly Brew』 by Karen MacInerney

シリーズ名:Dewberry Farm Mystery #3

 

 ハロウィンが間近にせまったテキサス州バターカップで、元リポーターにして今は農業に専念しているルーシー・レズニックはヤギと牛の群れに囲まれていた。おまけに最近農場に移築してきたばかりの古い家屋には幽霊が出るらしい――しかもそれがものすごく騒々しいといううわさが。さらにタロット占いで死が予言されると、大牧場のオーナーが死体で見つかる。

 

 かつてランダムハウスから出ていた〈朝食のおいしいB&B〉シリーズの作者、カレン・マキナニーの別シリーズ。〈朝食のおいしい~〉も現在7作目まで出ているのでぜひ続きを読みたいところですが、どこか引き取ってくれないかなぁ。。。

 さてこちらのシリーズでは主人公ルーシーが元リポーターだけに、あちこちつつきまわして情報をほじくりだすのはお手のもの! その手腕を発揮してくれるあたりが楽しみです。本作品には幽霊話がでてますが、ホーンテッドものではなさそう。

 

期待度:★★★★

 

 

Death Distilled: A Whisky Business Mystery

Death Distilled: A Whisky Business Mystery

 

 『Death Distilled』 by Melinda Mullet

シリーズ名:Whisky Business Mystery #2

 

 ウィスキー醸造所を相続してから3か月。アビゲイル(アビ)・ローガンは、若いころの憧れの人で地元では有名なロックバンドのリーダーだったローリーに頼まれ、彼を殺そうとしているのは誰かを探ることに。バンドのドラマーが不審死を遂げ、キーボード担当がひき逃げされて昏睡状態におちいると、ローリーは次こそ自分だと震えあがる。バンドメンバーたちがこれまでに起こしてきたトラブルを考えると容疑者リストは長くなるばかり……。

 

 調査報道を得意とするフォトジャーナリストとして賞を取ったこともあるアビゲイル。伯父から相続した醸造所をつづけるためにスコットランドのハイランド地方に帰ってきたのはいいけれど、あまり歓迎されていなかったみたい。調査能力とシャッターチャンスをとらえるセンスのよさは事件解決にどう活かされるのか? 

 

期待度:★★★

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気になる新刊 ~2017年8月(その2)~

 

Chime and Punishment (A Clock Shop Mystery)

Chime and Punishment (A Clock Shop Mystery)

 

 

『Chime and Punishment』 by Julianne Holmes

 シリーズ名:Clock Shop Mystery #3

カテゴリ:時計職人、

 

 数年前、風光明媚な小さな村オーチャードの静けさを打ち破って、皆に愛された時計塔が焼け落ちた。祖父から相続した時計店〈コグ&スプロケット〉を経営するルース・クラガンは、その時計塔を修復するという夢も受け継いでいた。ところが、資金集めのイベントで、町政担当者のキム・グレイが塔の鐘の下敷きになって死んでしまったために、町は騒然となる。何かというとルースの邪魔をしてくるキムのことは大嫌いだったが、身近な人や親しい人たちが容疑者になったのではじっとしてはいられない。

 

 歯車がいくつも組み合わさって時を刻む時計のしくみは、代表的な精密機械のひとつに違いない。時計を分解してそのしくみにほれぼれしたあと、もとに戻せなくなったなんて話を、昔はよく耳にしたものだ。弟たちがそうやって分解した時計をもとに戻してあげる役割だったという話を父からさんざん聞かされてきたが、機械に強い父はわたしの自慢だった。

 

 時計職人というと、わたしの中でちょっと前まではおじいさんのイメージがあったけど、今どきはどうなんだろう。1周まわってアナログなものの価値を残したい若い世代にはきっと女性もいるはずよね。本シリーズの主人公ルースもその一人だ。

 

 シリーズ3作目にしてようやく時計塔の修理にとりかかれるかと思った矢先の事件とあって、前途多難は避けられないもよう。ちなみに町政担当者というのは、選挙で町長を選ぶかわりに、(こちらは公選の)町議会が任命する町政の責任者だそう。

 

期待度:★★★

 

 

Macramé Murder (A Cora Crafts Mystery)

Macramé Murder (A Cora Crafts Mystery)

 

 

『Macrame Murder』 by Mollie Cox Bryan

 シリーズ名:Cora Crafts Mystery #3

 カテゴリ:ハンドクラフト、リゾート地、

 

 元カウンセラーでブロガーのコーラ・シュバリエが30代半ばにして人生をやり直すために選んだのは、ハンドクラフトの講習会ビジネスだった。

 今回はビーチの近くで貝殻のモザイクやシーグラスを使った飾り物などのクラスを開くことになったコーラ。ボーイフレンドと散歩していたときに出会った新婚さんもすてきな人たちで、すっかりビーチに魅せられたのもつかの間、翌日にはその新婦が死体で見つかってしまう。最初はクラゲに刺されたのが原因と思われたものの、ボーイフレンドのエイドリアンが殺したと疑われてしまい、またまた捜査に首を突っ込むことになるコーラ。

 

 マクラメ編みはご存知? 色とりどりの紐を編んだり結んだりして、アクセサリーやインテリア雑貨を作る手芸のひとつ。ナチュラルな雰囲気があって、カジュアルテイストな作品は見ているだけでも癒されます。手の込んだ編み目を見ると難しそうではありますが・・・。

 

 たまたまですが、8月(その1)で紹介したA Tangled Yarnと同じく、リトリートという合宿形式のワークショップを舞台にしたシリーズ。流行りなのかしら。

 

期待度:★★★

 

 

 

 『Smoothie Bowl Murder』 by Anna Lakewood

 シリーズ名:Harmony Café Mystery #2

カテゴリ:中編、カフェ、

 

 〈ハーモニー・カフェ〉のオーナー、オータム・ウッドは、姉を失業の危機から救うため、姉の代わりにホテル勤務のシフトに入ることになったが、まさかシワだらけのシーツや汚れた朝食トレイのほかに死体まで目にすることになるとは想像もしていなかった。ちょうど町では狩猟用弓矢の見本市が開かれていて、動物愛護団体がデモ行進をしにきているタイミングも重なり、容疑者リストは長くなるばかり。

 

 のんびりムードのサスペンスレスな(?)コージーミステリ。レシピ付き。100ページ余りで110円(kindle版、8/24現在)とお手頃なので、英語で小説を読むことになれていなくても手に取りやすいのでは? 

 

期待度:★★★

 

 

 

『High Stakes and Hazelnut Cupcakes in Las Vegas』 by A.R. Winters

 シリーズ名:Tiffany Black Mystery #10

カテゴリ:中編、カジノ、

 

 企業のCEOにして看護士、ハウスキーパーの顔ももつエイプリル・ウィルキンスが状況がどうみてもアヤシイとにらんで調べ始めたティファニーだが、嘘と大金が飛びかう裏世界をのぞきみてしまったおかげで命をねらわれるはめに……。

 

カジノのディーラー、ティファニー・ブラックが主人公の人気シリーズは早くも10作目。ティファニーの気持ちにおかまいなしに自分好みの男性をつれてきてはくっつけようとする母親をはじめ、個性的でゆかいな脇役たちがたくさんいるようで、ミステリとしては弱くてもコージーらしさを楽しめそうです。

 

 

期待度:★★★★

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気になる新刊 ~2017年8月(その1)~

今月前半は、大好きなネコが出てくる新シリーズと、日本でもすでにおなじみのシリーズ新刊がありますよ~。

 

Cat About Town: A Cat Cafe Mystery

Cat About Town: A Cat Cafe Mystery

 

 

『Cat About Town』 by Cate Conte

シリーズ名:Cat Café Mystery #1

カテゴリ:カフェ、猫、マサチューセッツ州

 

 マサチューセッツの沖合に浮かぶデイブレイク島に帰ってきたマディ・ジェイムズは、商売を――そしてあわよくば恋も――始めようと、意気込んでいた。ひょんなことから茶トラの野良猫を飼うことになったマディは、猫カフェを始めようと思い立つ。しかし、毛むくじゃらの新しい仲間が町の鼻つまみ者の死体を見つけたせいで悲惨な目にあうとは、予想もしていなかった。町じゅうの注目を集めるマディ(この猫飼い女はなにもの?)。ペットの毛の管理と事件の推理さえなければ、いまごろは彼氏候補のひとりやふたりは登場して彼女の関心を買おうとしていたはずなのに……。殺人犯がそのへんをうろついていたんじゃ、「ふたりは幸せにくらしましたとさ」なんて夢を見るわけにもいかないじゃないの!

 

 サンフランシスコでジュース・バーを営むマディが祖母の葬儀のために帰郷してみたら、祖父の借金のために家族が長年暮らしてきた家を手放さなくてはならないかもしれないことが判明。ところが借金の取り立てをしていたフランク・オマリーが殺され、最後にいっしょにいるところを見られたマディが疑われ……。

 借金があるというとダメ親父っぽく聞こえるけど、祖父のレオは地元の警察署長だったらしく、孫娘マディとの仲もいいそうなので、この2人のやりとりは面白そう。

 作者のCate Conteは、Pawsitively Organicシリーズを書いているLiz Mugaveroのペンネーム。

 

期待度:★★★★★

 

 

On Her Majesty's Frightfully Secret Service (A Royal Spyness Mystery)

On Her Majesty's Frightfully Secret Service (A Royal Spyness Mystery)

 

 

『On Her Majesty’s Frightfully Secret Service』 by Rhys Bowen

 

シリーズ名:Her Royal Spyness #11

カテゴリ:英国王妃の事件ファイル、貧乏お嬢さま

 

 出産をひかえてイタリアに滞在している親友のベリンダから手紙をもらったジョージ―。駆けつけたいと思っていたところへ渡りに船。パーティに招待されたイタリアで皇太子がこっそり結婚してしまうのを阻止せよという密命を王妃さまからうけて出向いたはいいけれど、ベリンダのことは秘密にしておかなければならないのが苦しいところ。ダーシーはいつものように極秘で行動中だし、ジョージ―の母も乱入(?)してくるし……。

 

 翻訳も順調に出ている人気シリーズ(翻訳はコージーブックスから7作目まで発売中)、はやくも11作目。今回は潜入(?)したパーティで出席者たちがそれぞれに何やら企んでいるようす。そこで招待客の一人が殺され、ジョージ―の母が容疑者となれば……。

 

期待度:★★★

 

A Tangled Yarn (A Yarn Retreat Mystery)

A Tangled Yarn (A Yarn Retreat Mystery)

 

 

『A Tangled Yarn』 by Betty Hechtman

 

シリーズ名:Yarn Retreat Mystery #5

カテゴリ:編み物、海辺のリゾート地、

 

 リゾート地にある高級ホテルで開かれるヤーン・リトリートの主催者として忙しい日々を送るケイシーだが、今回の目玉企画である指編みには興味が薄い参加者のために別の企画まで考えるはめに。そこへ追い打ちをかけるように、別のグループに参加していたトラベルライターがホテルの部屋で殺されているのが見つかり、ホテルオーナから助けを求められたケイシーは……。

 

 主人公のケイシーが運営しているヤーン・リトリートとは、宿泊をともなった編み物のワークショップのこと。サンフランシスコから南に2時間、モントレー半島というリゾート地を舞台に、編み物三昧の週末を楽しむイベントといったところ。

 この仕事は亡くなった伯母から引き継いだものだが、もともとケイシーはお菓子職人なので、ニットの編み方のほかにレシピもついているという欲張りなシリーズ。

 

期待度:★★★★

 

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手を動かしながらおしゃべりする仲間と時間があるって最高だ

 

Forget Me Knot (A Quilting Mystery)

Forget Me Knot (A Quilting Mystery)

 

 

『Forget Me Knot』 by Mary Marks

キャラクター      ★★★★

プロット              ★★★★

総合満足度          ★★★★

カテゴリ              キルト、ユダヤの習慣、中高年女性、社会的弱者、

 

 キルトという言葉から日本人がイメージするものには、けっこう幅がありそうな気がする。決まったパターンに布を並べてつないだベッドカバーだったり、草花や小鳥のアップリケだったりを基本として、生地屋さんで売っている「キルティング生地」を思い浮かべる人もいるだろうけど、絵の具の代わりに布で描く絵画のような作品があって展示会なども行われているのを知っている人ってどのくらいいるものなのだろう? 日本でも定期的にキルトショーは開かれているけど、知らない人は知らない世界かも。

 

 アメリカでは、開拓時代に布を無駄にしないために作られたものが今ではアンティークとして高値がついたりもしている一方、同じように家族のために作られ使い倒される実用品のほかにアート作品としての新作もどんどん作られている。デザインや配色がみごとだったり針目がそろっていたりするものは芸術作品としての評価も高い。

 

 マーサ・ローズは、友人のルーシー、バーディと週1回あつまっていっしょにキルティングをするのを楽しみにしている。恒例のキルトショーが近づいたその日は、何度も金賞をとっているスター的存在のキルター、クレア・テリーも来てくれることになっていた。ところが3人が迎えに行ってみると、クレアは自宅のキッチンであおむけに倒れて死んでいた。

 

 お悔やみを告げにクレアの実家を訪れたマーサは、クレアが自分のキルトに縫いこめたという「物語」を読み解いてくれと母親に頼まれる。絵画のようなキルトには、装飾的な効果を狙って刺繍を施すことがあるが、クレアもその手法を多用していて、なかでもフレンチノットという小さな玉止めみたいなものをたくさん並べている。視覚障害をもつ子供の支援団体にクレアが多額の寄付をしていたことから、細かなフレンチノットが点字になっていることに気づいたマーサが解読した「物語」は、おぞましくも悲しいものだった――。

 

 裕福だけれどいびつな家庭に育ったクレアに対して、不完全ながら愛情を感じられる家庭で育ったマーサが心を寄せていく。事件が片付いた後に改めて自らの出生のいきさつを知ったマーサが家族のきずなを確認する場面はとても感動的。「マーサ、おまえにはただ、普通の人生を送り、幸せになってほしかったんだよ」

 

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気になる新刊 ~2017年7月(その2)~

今月は1作目を読んで続きも読みたいと思ったシリーズの新刊がぞくぞくと出ていて、悩ましい限りです。はやく追いつきたい・・・・(*´▽`*)

 

Muffin to Fear (A Merry Muffin Mystery)

Muffin to Fear (A Merry Muffin Mystery)

 

 

 

『Muffin to Fear』 by Victoria Hamilton

シリーズ名:Merry Muffin Mystery #5

カテゴリ:お菓子レシピ、古城、ゴーストハンター、

 

メリーが自分の結婚式の準備で大わらわだというのに、親友ピッシュはウインター城に幽霊がいることを明らかにしようとテレビ番組の取材を要請。ところがやってきた番組スタッフはどうにも息が合わない、というより反目しあって口論が絶えないようす。番組が製作できるのが奇跡に思えるほどだ。

 

スタッフが連れてきた霊能力者がここで殺された人と接触したと言い出すと、事態はさらに悪い方向へ。出演者がふたりも死体で発見されるにいたっては、一日でもはやく犯人を見つけなければ結婚式どころじゃないってば!

 

 主人公メリー・ウインターは、ほとんどつきあいのなかった大叔父からウインター城を相続したのをきっかけに、ニューヨークでのスタイリストの仕事をやめ、得意のマフィン作りで商売を始めることにした。

 スタイリスト時代からの親友でモデルをしていたピッシュもなぜか同居することに。複数飼いの猫たちが駆け回る広いお屋敷を舞台に、一見華やかな業界の人たちも出入りする本シリーズは注目しています。

 

期待度:★★★★

 

 

A Toast to Murder (Mack's Bar Mysteries)

A Toast to Murder (Mack's Bar Mysteries)

 

 

『A Toast to Murder』 by Allyson K. Abbott

シリーズ名:Mack’s Bar Mystery #5

カテゴリ:バー、カクテルレシピ、素人探偵団、

 

ミルウォーキーの下町にも年末はやってくる。〈マックス・バー〉のオーナー、マッケンジーが新年に願うのはただ一つ、バーの用心棒ゲイリーを殺した犯人を捕まえること。バーの常連客たちからなる素人探偵団は招待客限定のパーティを企画して被疑者を誘いこんだはいいけれど、当の相手が冷たくなって見つかるとなると話は違ってくる・・・?

 

 主人公のマックことマッケンジーは“共感覚”の持ち主。五感への刺激が互いに混線して、においに色や音がついていたり、音に味を感じたりしてしまう。その特殊能力を活かして警察の捜査に協力しているマック。もともとは父が経営していたバーを受け継いだマックが殺人事件に出くわすたびに、父のころからの常連客たちもそれぞれの得意分野で事件解決に協力してくれている。そういう仲の良いもの同士の居心地のよさと、新規客もフレンドリーに迎え入れる雰囲気のバーには自然と人が寄ってくるということか。

 

期待度:★★★★

 

Wrong Side of the Paw (A Bookmobile Cat Mystery)

Wrong Side of the Paw (A Bookmobile Cat Mystery)

 

  

『Wrong Side of the Paw』 by Laurie Cass

 シリーズ名:Bookmobile Cat Mystery #6

カテゴリ:移動図書館、猫、

 

今日も今日とて管内をめぐる移動図書館には看板猫のエディが乗りこんでいる。いつもはおとなしく利用客に愛嬌を振りまいている彼がひょいと飛び出していったら、それは死体発見のサイン? 今回エディが見つけたのは通りすがりのピックアップトラックの荷台に寝かされた死体。当然、運転していた地元の弁護士が疑われたわけだが、図書館員の性(さが)として、ミニーはもっと詳しく調べてみないことには納得できない・・・。

 

 田舎の町にも公立の図書館があるのはよいことだけど、難点があるとすれば遠いこと? 広大な地域にぽつりぽつりと人が住んでいるような場所では、移動図書館が巡回してくれるほうがありがたいもの。ましてや、かわいい猫が乗りこんでいるとあれば子供たちは大喜び。湖に浮かぶボートハウスでの暮らしぶりもなかなかに興味深いシリーズです。

 

期待度:★★★

 

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三姉妹探偵団、始動します。

 

The Sleuth Sisters (The Sleuth Sisters Mystery Book 1) (English Edition)

The Sleuth Sisters (The Sleuth Sisters Mystery Book 1) (English Edition)

 

 

『The Sleuth Sisters』 by Maggie Pill

 

キャラクター      ★★★★

プロット              ★★★

総合満足度          ★★★★

カテゴリ              私立探偵、三姉妹、

 

 キンドル版を無料で入手した1冊。キンドルの洋書はキャンペーン的に時々無料になっていたりするけれど、読んでみるとハズレであることもじつは多い。そうでもしないと続きが売れないようなシリーズ、という事情もあるのだろうが。

 

 なので、あまり期待せずに読み始めた作品ながら、これはなかなか面白く読めました。主役となる三姉妹はそれぞれに個性的で、過去にはケンカもすれば行き違いもあったかもしれないけど、まずまず仲の良い姉妹だというのは安心して読める要素ではないかと思います。

 

 弁護士の職を52才で早期退職したバーブは、故郷のミシガン州に戻って探偵業を始めることにした。強く勧めたのはすぐ下の妹フェイ、50才。ケガのせいで働けなくなった夫を支えながらいろんな仕事をして息子3人を育て上げたが、ここへきて失業。「自分が自分のボスになる」ため、独身で子供もいないバーブの財力を活かしてビジネスを始めよう、というわけだ。

 

 〈スマート探偵事務所〉に初めての事件らしい事件を依頼してきたのは、行方不明の兄を探しだして無実を証明してほしいというメレディス・ブラウン。ニール・ブラウンは6年前、身重の妻カリーナとその兄を殺して逃亡したとされていた。石材業で財を成した創業家の令嬢だったカリーナと建築請負業のニールの格差婚を苦々しく思っていたカリーナの父が現場から走り去るニールを見たと証言し、警察もニールを犯人と決めつけたのだ。

 

 まずは逃走経路をたどってニールを探し出そうとするバーブとフェイ。まだまだ素人なのでずいぶんとドタバタな追跡だが、途中からは末っ子のレッタもこっそりと捜査に加わり、殉職警官の妻という立場をうまく利用して警察側の情報も集めたりして、3人はしだいに真相に近づいていく。

 

 ところで、読書好きなら日々の生活の中で目や耳にする言葉というものに敏感になりますよね。じつは長女のバーブ、文法やスペルの間違いが気になってしかたないタイプ。町中で目にした看板などに間違いを見つけると、それを訂正したくて居ても立っても居られない。ペンキと刷毛を車のトランクに常備していて、夜になると全身を黒い服に包み、こっそり「お直し」をしてあげるし、新聞記事に間違いを見つければそれを投書で指摘せずにはいられません。身近にいればメンドクサイかもしれないけれど、50過ぎのおばちゃんがイタズラがうまくいったとほくそ笑んでいるのはカワイイといえなくもない……かも?

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