先月に引き続きまたもや月末ギリギリになってしまいましたが、まだまだ入手困難なんてことにはならないと思うので、ぜひチェックしてみてくださいね！
今月はミステリからご紹介していきます。
『The Quiet People』 by Paul Cleave
シリーズ：non
カテゴリ： スリラー
キャメロン・マードックと妻のリサは犯罪小説作家として名をあげている。新刊のプロモーションのために各地をまわりながら、犯罪を犯しておいて逃げ切る方法を自分たちほど熟知している人間はいない、と豪語していた。そんなふうだから、彼らの7才の息子が行方不明になったとき、警察も世間もみな、彼らがついに自らの言葉を証明して見せるつもりではないかと考えた。マードック夫妻はこんどこそ、完全犯罪を犯して逃げ切ろうとしているのか？
ニュージーランドの作家さんで、クライストチャーチを舞台にした作品を精力的に発表しています。邦訳もすでに『清掃魔』（訳：松田和也、柏書房、2008）とその続編『殺人鬼ジョー』（訳：北野寿美枝、早川書房、2015）があるのですが……。シリーズ作品で内容的にもつながりが深いにもかかわらず、出版社が違ったために続編が単発作品のような売り方をされたのと、一種の「信頼できない語り手」の1人称で語られる文体の理解が難しかったのか、評判がイマイチだったのは残念。ヨーロッパを中心に各国語に翻訳されていたり、各種のミステリー賞のショートリストに入った作品も多いので、めげずに売り込んでほしいものです。
このほかのミステリでは、すでに大評判のリチャード・オスマン『木曜殺人クラブ』（訳：羽田詩津子、ハヤカワ・ミステリ）の続編『The Man Who Died Twice』も出ました。
続いてコージーミステリをどうぞ。
『The Corpse in the Gazebo』 by Debra Sennefelder
シリーズ：Food Blogger Mystery #5
カテゴリ：コージーミステリ
フードブロガーとして名前が売れてきたホープ・アーリーは、これまでの事件で町を「ひっかきまわした」とみなされて、バーディ・ドノバンに町を追い出されそうになった。なんとか隣人との関係を修復しようと、とっておきのレシピでマフィンを焼いて持って行ったが、バーディはその翌日に死体となって発見された。ホープの恋人で警察署長のイーサンも容疑者リストからホープを外すことは難しく、これまでのように捜査に協力することもままならない。彼女ひとりでどこまで真相にせまれるのか……？
ブロガーというのがりっぱに職業として成り立つようになって久しい昨今、フード系のライターを主役にしたコージーミステリもたくさんありますが、このシリーズも順調に新作が出ています。このシリーズの主人公ホープは元編集者でバツイチ、とこれまたコージーの王道を行くキャラクター。ちょっとしたことにへこんだり舞いあがったり、「だよねー」と言い合える女友達みたいな存在は何人いても楽しいものだから、コージーはやめられないのです。
コージーからはこのほかに〈ドーナツ事件簿〉シリーズ54巻！となる『Wicked Wedding Donuts』が出ました。こちらも翻訳が止まって寂しいかぎりですね。たしかに代り映えしないっちゃしないんですが、それがコージーの魅力でもあるはずなんだけどなぁ。。。
そして最後はSFでもありミステリでもあるこちら。
『The Body Scout』 by Lincoln Michel
シリーズ：non
カテゴリ：SFミステリ
製薬会社が運営する野球リーグのために選手をスカウトしてくるのがコボの仕事なのだが、このところ行き詰まりを感じている。借金もハンパない。そのうえ、子供時代の親友でモンサント・メッツの強打者J・J・ザンズが殺された。犯人を見つけ出すために業界の闇に切り込んでいく決意を固めたコボだが……。
遺伝子編集技術と進化した薬剤のおかげで、金さえあればどんな肉体も望むまま手に入るようになったこの世界で、時代遅れのサイバネティクス知識しかもたないコボがくりだす思いがけない変化球とは？
野球はもちろんスポーツ全般にまったくなじみのない私でも、遺伝子編集なんてものが倫理的に許容されるようになったら（公平性が保てなくて）もうスポーツなんて成り立たないんじゃないかくらいの想像はしますが、さてどんな「変化球」を見せてくれるのか、楽しみな作品です。
