非常事態宣言の効果はいつになったらあらわれるのでしょうか……
まだまだ続く自粛生活、といっても世間はそんな様子もないのがまた……ね。
テレワークできる人はぜひ外出を控えつつ、通勤通学の時間が浮いたところで本読みたいよね? ね?
というわけで今月も豊作ですよ~
『Local Woman Missing』 by Mary Kubica
カテゴリ:スリラー
最初にいなくなったのはシェルビー・ティボウだった。続いてメレディス・ディッキーとその6才の娘デリラも。立て続けに起きた失踪事件に、平和な町は震えあがった。調べるほどに謎が深まるばかりの事件は、やがて忘れられた。
11年後、デリラと思われる少女が見つかった。だがデリラの弟レオには彼女がほんとうに姉なのかどうか、信じられなかった……。
現在と過去を行き来しながら進むストーリーで、複数人の視点から語られる構成は複雑そうだけれど、いやがおうにもサスペンスが高まるらしくてそのへんの評価は高い作品。ただし、結末には納得できない人も多いみたいなのがちょっと不安。それでも児童虐待と家族のあり方とかを絡めたテーマは興味深いので読んでみたい。
Made-up for Murder: Mid-Life Mysteries #1 (English Edition)
- 作者:Bates, Moira
- 発売日: 2021/05/31
- メディア: Kindle版
『Made-up for Murder』 by Moira Bates
シリーズ:Mid-Life Mystery #1
カテゴリ: コージー
子育て真っ最中だったころ、ジュリア・メルヴィンは口を酸っぱくして子供たちに言い聞かせてきた。「悪いことをしたら、その罰を受けるんだよ」と。まさかそのせりふを息子に言われる日がくるとは、想像もしていなかった。
化粧品メーカーによる動物実験への反対運動をしていて捕まったジュリアは、もう二度とこんなことはごめんだと思い、反対運動からは距離を置くことにした。ただただ動物たちを助けたかっただけなのだから。それなのに、化粧品会社オーナーの死体を見つけてしまうなんて、どういうこと?
子育ても一段落した40代女性を主人公にした、血なまぐさいシーンも汚い言葉も出てこない、なんならハラハラドキドキのクリフハンガーもない、というコージーに徹した作品。アガサ・レーズンが好きならきっと好きになる、といううたい文句はどうだろう? アガサだってけっこうきつい言葉遣いやハラハラ場面はあると思うけど、それなしで物足りなくないかしら? とはいえ、ちょっとおマヌケ感のある雰囲気はキライじゃないのよ。
〈コクと深みの名推理〉でおなじみクレオ・コイルが以前アリス・キンバリー名義で書き始めた〈ミステリ書店〉シリーズは5巻まで翻訳が出ましたが、コイル名義にして再出発してからの第7巻 The Ghost and the Haunted Portrait が今月発売です。2巻で翻訳が止まっているジェン・マッキンリーの〈カップケーキ探偵〉シリーズ第13巻 For Batter or Worse も今月発売されます。
The Ghost and the Haunted Portrait (Haunted Bookshop Mystery Book 7) (English Edition)
- 作者:Coyle, Cleo
- 発売日: 2021/05/04
- メディア: Kindle版
For Batter or Worse (Cupcake Bakery Mystery Book 13) (English Edition)
- 作者:McKinlay, Jenn
- 発売日: 2021/05/04
- メディア: Kindle版
今月のSF作品は2つ! 最近こういう傾向の作品が気になって仕方ないのだけど、あいかわらず追いつけずに積みあがっているのです。
『The Human Zoo』 by Kasey Rocazella
カテゴリ:SF
世界屈指の権力者のもとに生まれたジャックス・クーパーは、何ひとつ不自由のない人生を歩んでいる。彼はいま、〈グローブ〉誌の記者として独自取材を進めている。父が君臨する大企業〈ヒューマン・ズー〉社に飼育動物に紛れて潜入したジャックスは、そこでプライヤと出会い、人間であるとはどういうことか、という命題をつきつけられる。
飼育舎のなかで生まれたプライヤが知っているのは、自分の居場所はここではないということ、そしてなんとしてでもここから逃げ出してやる、ということだけだ。とうてい不可能だと思っていたそれは、ジャックスがやってきたことでにわかに現実味を帯びてきた。
この社会を解体するか、家族の圧力に屈するか、ジャックスは選択を迫られる。
巨大企業が社会インフラそのものとなって強大な権力を持つようになるとどうなるか、というのはもういつ現実になってもおかしくない昨今、こういうテーマが増えるのはわかるんですが。ちょっとボーイミーツガール的な古式ゆかしい雰囲気も感じられるあらすじですね。〈ヒューマン・ズー〉社が何をしているのかが気になるポイントです。
『Firebreak』 by Nicole Kornher-Stace
カテゴリ:SF
知り合いの誰もがそうであるように、マロリーは企業間戦争の犠牲者だ。子供のころに、空爆によって家族も家も失った。大人になった今、8人の仲間とともにホテルの部屋にぎゅうぎゅう詰めになって暮らしている。みんな、とにかく生きていくために、いくつもの仕事を掛け持ちしている。マロリーがいちばん得意とする仕事は、仮想現実(VR)のウォーゲームのストリーミングだ。このゲームの醍醐味は、敵の戦闘員を殺すことではなく、スペックオプスの工作員たちを垣間見れることだ。彼らは、このアメリカを事実上、牛耳っているステラクシス社が所有し育成している、超戦士なのだ。
スペックオプス工作員と偶然出会ったことで、マロリーはおそろしい事実に気づいてしまう。現実の工作員たちはステラクシス社が作り出しているのではなく、マロリーと同じように戦争ですべてを失った子供たちで、連れ去られてきて超戦士となるための訓練を強いられたのだった。彼らを称える世界中の人々は、嘘を信じこまされているのだ。
自分の生死を握っている大企業に逆らうことはあまりにリスクが大きい。かといって、知ってしまったからにはじっと座っていることなどできやしない。
子供たちが戦士として仮想現実の世界で戦う、ということで映画『レディ・プレイヤー1』とか『エンダーのゲーム』を連想しますね。ちょっと違うけど『ハンガーゲーム』風でもあるかもしれない。つまり、エンタメ要素多めの娯楽作品として面白そう。
おまけのもう1つ、『火星の人』『アルテミス』でご存じアンディ・ウィアーの新刊 Project Hail Mary も今月登場。ミステリ要素もあり、星間旅行の話でもあるという本作も期待大です。