つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2021年4月~

 今月もギリギリ間に合いました。ここまでくると、ご紹介の本たちはほとんどすでに発売されています。外出を控えたいこのゴールデンウィーク、どっぷり読書に浸かりたい!

 まずはコージーから。

 『Murder in the Cookbook Nook』 by Ellery Adams

シリーズ:Book Retreat Mystery #7

カテゴリ: コージー

 

 いくつもの図書室に入り浸り放題という読書家垂涎のリゾートホテル〈ストーリートン・ホール〉の次なる企画は料理コンテスト! ホテルの庭に設営したテントの中で6人のシェフによる熱戦が繰り広げられる中、そのうちの1人がパントリーで貴重な料理本に埋もれて死んでいるのが見つかった。直前には町のシンボルとなっているマスコットの衣装がいたずらされていたけれど、それと事件の関係は……?

 

 エラリー・アダムズは以前ランダムハウス講談社から出ていた〈ダイエット・クラブ〉シリーズのJ・B・スタンリーの別名義です。アダムズ名義のほうでいくつものシリーズを書き続けていますね。

 この〈ブック・リトリート〉シリーズ、どうやら近々翻訳が出るようです。ちゃんと1作目のMurder in the Mystery Suiteから刊行されるらしいので、楽しみです。

 なんと、わたしの勘違いだったらしく、翻訳が出るわけではなさそう。残念。(5/16追記) 

 

 

 続いてスリラーを。 

  『Lies We Bury』 by Elle Marr

シリーズ:non

カテゴリ:スリラー

 

 20年前、マリッサ・モーは自分の家と呼んでいた地下の牢獄を逃げ出した。27才になったマリッサは、そのトラウマを乗り越え、新しい名前でフリーカメラマンとして活動している。

 ポートランドで起きたおぞましい連続殺人事件を追うことになって現場を目にしたマリッサの脳裏に、封印したはずの記憶がよみがえってきた。その現場には、彼女が子供のころに持っていたのとそっくり同じオモチャやガラクタが散らばっていたのだ。そして、彼女に宛てたとしか思えないメモが残されていた。犯人を追及するには、封印した記憶を掘り起こし、ひた隠しにしてきた過去と直面しなければならない。

 

 児童虐待を取り上げる作品はすでに数えきれないくらいにあるなかで、本作はそのサバイバー本人が封印した過去に立ち向かうという設定。

 なぜか日本Amazonではアダルトにジャンル分けされているらしく、商品ページのまえに年齢確認されてしまうのですが、そんなにあからさまな描写でもあるんでしょうか。米Amazonではそんなことないので何かの間違いな気もしますが。(そのせいでしょうか、Amazonへのリンクが出てこないので楽天ブックスのほうをご案内しております。)

 

 最後はSF作品で。

 『The End of Men』 by Christina Sweeney-Baird

シリーズ:Non

カテゴリ:近未来ジェンダーSF

 

 2025年、スコットランドで男性だけが罹患する致死性のウイルスが蔓延し始めた。これを最初に報告した医師アマンダ・マクリーンは当初まったく相手にしてもらえなかった。だがほんとうにそんなウイルスがあるとわかってきたときには、すでに世界中に感染が広がりつつあった。男たちが次々と命を落とす中で、世界を維持するための女たちの戦いが始まる。

 

 まさにいま読みたい作品ですねぇ。COVID-19のせいで日本のみならず世界中で経済が停滞し、とりわけ女性たちへの負荷の大きさがクローズアップされてきたこの1年。奇しくも、男性だけが罹患し死にいたる伝染病のせいで男女が逆転する社会を描いたよしながふみのマンガ『大奥』も完結したばかりです。『大奥』は江戸時代を舞台にして将軍が女性だったら、という設定の歴史改変SFですが、こちらはまさに今現在の世界とほとんど同じ時代背景の近未来SF。

 最初に異変に気づいて警告を発した医師も女性なら、この歴史的大災厄を記録しようとする社会学者も女性、新しい社会制度の構築に携わることになる情報アナリストも女性、そしてワクチン開発に挑む科学者もまた女性、という4人がそれぞれ一人称で語り継いでいく構成の本書は、彼女たちが夫や息子という身近な存在を失い、労働力や生殖という社会的な問題に立ち向かい、家族の意味を探っていく過程を描いた力作。

 

 

 一人称を「弊機」と訳して話題を呼んだマーサ・ウェルズの〈マーダーボット・ダイアリー〉シリーズの6巻Fugitive Telemetryも今月発売です。6作目といっても、すでに翻訳の出ている上下巻が1~4作目の中編をまとめたもので、まもなく翻訳がでるらしい5作目Network Effectはこれだけで1冊分の長編、そしてこの6作目はまた中編ということのようです。てことは翻訳が出るのはあといくつか中編がたまってから……?

 

 そして同じく去年翻訳された〈セント・メアリー歴史学研究所報告〉シリーズ『歴史は不運の繰り返し』の後続作Another Time, Another Placeも登場。なんともう12作目。このシリーズは各長編のすき間を埋める短編もたくさんでているので、ぜひ翻訳のほうも続いてほしいものです。

 

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