つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2020年10月~

 今月は表紙がかっこいいSF作品から紹介していきます。

  

Bright and Dangerous Objects (English Edition)

Bright and Dangerous Objects (English Edition)

 

 

『Bright and Dangerous Object』 by  Anneliese Mackintosh

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ:SF

 

 深海ダイバーのソルヴィグには心に秘めた野望がある。火星への最初の入植者になることだ。火星移住計画の候補者には選ばれたものの、この野望を叶えることは、同時に彼女がこれまでに手にしてきたあらゆるものを手放すことでもある。

 宇宙へと出ていくことに現実味がますごとに、37歳のソルヴィグは己を見つめなおすことになる。パートナーのジェイムズにどう打ち明けようか? それともこの地上での暮らしを続けるべき? ジェイムズが望むように、子供を持つことを考える? 家族を持ちながら火星に行く方法なんてある? やりたいこととやるべきことのあいだで気持ちが揺れ動くことは、これまでもずっと女性たちにつきつけられてきた問題だ。ソルヴィグは何を望み、何を手に入れるのか。

 

 地球外惑星への移住計画に身を投じる女性の物語といえば、今年いちばん話題になったのはロビネット・コワル『宇宙(そら)へ』。似たような話といえばそうかもしれないけれど、あちらの主人公エルマがわりと目標に向かって一直線に突き進んでいくのに対して、こちらのソルヴィグはなにやら迷いに迷っている感じ。そのほうが現実の多くの女性たちに近いような気がする。エルマのぶっちぎりスタイルは爽快感があって「かっこいい!」と思えたけど、ソルヴィグには「そうだよねぇ、迷うよねぇ、選べないよねぇ」と肩を抱いてうなずきあうような感じになるんじゃないかな。

  

Goodnight Beautiful: A Novel (English Edition)

Goodnight Beautiful: A Novel (English Edition)

 

 

『Goodnight Beautiful』 by  Aimee Molloy

シリーズ:ノンシリーズ

カテゴリ: スリラー/サスペンス

 

 新婚ほやほやのサムとアニーは、ニューヨーク州北部にあるサムの故郷の町での新しい生活にわくわくしていた。ところが、セラピストの夫サムが自宅の1階に構えた診療所で(おもに女性の)患者を診ているあいだ、妻アニーは2階でひまを潰すしかない日々が続いていた。しかし、サムは気づいていないが、診察室での会話が通風孔を通じて上階の部屋に筒抜けになっていたのだ。離婚しようかとお悩み中なのは薬剤師の妻。恋人とベッドですごす時間にご不満なのはとある有名な画家。どうして聞かずにいられようか。いつしかアニーは、このひまつぶしに夢中になっていた。

 転機はグリーンのミニクーパーで乗りつけたフランス娘とともにやってきた。サムが新婚生活を放りだして出ていってしまったのだ。

 

 前作『The Perfect Mother』でもいわゆる「信頼できない語り手」をうまく使ってサスペンスを盛り上げていたエイミー・モロイ。今作でも同様に読者を翻弄してくれてるみたいです。

  

 

 

『On Borrowed Crime』 by  Kate Young

シリーズ:Jane Doe Book Club #1

カテゴリ:コージーミステリ

 

 伯父がやっている探偵事務所の受付という仕事には満足しているし、謎解きが大好きな〈ジェーン・ドー・ブッククラブ〉の仲間たちはサイコーな友人だし、両親は結婚50周年を祝ったばかり。ライラ・ムーディの生活はこれ以上望めないくらいに満足なものだった。ところが、親友のメラニーが休暇中、ライラの玄関先にスーツケースに詰めこまれた死体が見つかってからは雲行きが怪しくなってきた。

 死んだのは〈ジェーン・ドー〉メンバーのキャロルで、そんな状態で発見されたにもかかわらず、まえから心臓のぐあいが悪かったというだけで死因不明とされてしまう。しかし、問題のスーツケースがメラニーのものだとわかると、休暇から帰宅した彼女が第一容疑者に。親友の嫌疑を晴らし、ブッククラブのメンバーの死因を迷宮入りにさせないために真犯人探しに乗り出したライラだが、次なる標的にされそうになり……。

 

 近頃では日本でも読書会がメジャーな存在になってきたと感じますが、アメリカでは固定メンバーが週1や月1で集まるタイプの〈ブッククラブ〉のほうが身近なようですね。ブッククラブをテーマにしたコージーミステリはたくさんあります。本作もそこに参入してきたというわけで。もはや蘊蓄を語るとかいうよりは、単にミステリ好きで自分でも事件を解決してみたいというキャラたちが便利なだけのような気もしてきますが、メンツしだいでは気の置けない友人同士がわいわいとおしゃべりするだけの場面が無性に楽しかったりするので、そのあたりに期待しています。

 

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