今月は気になる本が多すぎ!(笑)
ところで、突然ですが『note』始めました。気になっただけでなく実際に読んでみて気に入った、「翻訳されてほしい本たち」を紹介していきます。こちらもぜひご覧ください!
さて、今月の新刊、まずはコージーから1冊。
『Death at High Tide』 by Hannah Dennison
シリーズ:Island Sisters Mystery #1
急死した夫ロバートの遺品を整理していたエヴィ・ミードは謎めいたメモを見つけた。イングランドの南西、コーンウォール半島の先に浮かぶシリー諸島のひとつ、トレガリック・ロック島にあるホテルの所有権がエヴィのものになるかもしれないというのだ。いまだ悲しみの癒えないエヴィは会計士に処理を任せようとしたが、妹のマーゴットはすかさず飛行機を手配し、週末を使って真相を明らかにしようとふたりでトレガリックに向かうことになった。
ところが、ホテルに着いてみると現オーナーはロバートには会ったこともないと言って協力してくれそうもなく、住民たちも頑なな態度を見せていた。そこへホテルで殺人事件が相次いで起こる。高潮のせいで本土との連絡が絶たれ、ほかに訪問客もいないせいでエヴィとマーゴットが容疑者と見なされ……。
孤立した離島のホテルという設定、外見も性格も正反対の姉妹が主役、というだけでとりあえず読んでみたくなりますね。著者ハンナ・デニソンはM.C.ビートンやクリスティに影響を受けたというだけあって、イギリスの正統派コージーの王道ともいうべき筋立てが得意なようです。
そして今月は翻訳も人気となっているリース・ボーエンの〈貧乏お嬢さま〉シリーズ14巻が、さらにはnoteマガジンでも真っ先にご紹介した Cat in the Stacks シリーズも13巻が発売となります。
The Last Mrs. Summers (A Royal Spyness Mystery Book 14) (English Edition)
- 作者:Bowen, Rhys
- 発売日: 2020/08/04
- メディア: Kindle版
Cat Me If You Can (Cat in the Stacks Mystery Book 13) (English Edition)
- 作者:James, Miranda
- 発売日: 2020/08/25
- メディア: Kindle版
お次はサスペンス/スリラーもの。いつもは選び抜いた1冊ですが、今月は絞り切れずなんと3冊もご紹介しちゃいます。
『The Night Swim』 by Megan Goldin
カテゴリ:サスペンス/スリラー
ポッドキャストで配信する犯罪ドキュメンタリーが無実の男性の釈放につながったことで話題沸騰し、レイチェル・クラルの名前は一夜にして世間に知れ渡り、正義を求める人々の注目を集めることとなった。だがおおやけにしているのは名前と声だけであるにもかかわらず、救いを求める手紙が直接彼女のもとに届けられ、レイチェルは不安を覚える。
ネアポリスの町は衝撃的なレイプ事件の裁判で揺れていた。オリンピック水泳の代表候補にもなっている有望な青年が、警察署長の孫娘をレイプしたかどで訴えられたのだ。レイチェルは並々ならぬ意気込みで調査に乗りだすが、謎の手紙は行く先々に届く。後をつけられているかのように。
手紙の主は、25年前に水難事故で亡くなったとされる妹ジェニー・スティルスは殺されたのだと主張する。関係者が一様に口を閉ざすなか、調べていくうちに2つの事件のつながりが見えてくる……。
著者メーガン・ゴールディンはオーストラリアの作家で元ジャーナリスト。ロイターやヤフーニュースに記事を書いていた彼女の3作目となる本書。2作目の The Escape Room は、あのリー・チャイルドも絶賛したとか。これも気になります。
最近は非英語圏のミステリが話題に上りがちですが、オーストラリアやニュージーランド、カナダなど、英語圏でもまだまだ未開拓な作家さんたちがいるはず、と期待がふくらんできます。
『Little Disasters』 by Sarah Vaughan
カテゴリ:サスペンス/スリラー
友人になって10年、リズの知っているジェスという女性は、底なしの愛と忍耐力、そしてエネルギーを持って3人の子供を育てる専業主婦だった。だがそんな思いこみをぶち壊したのは、たったひとつの出来事だった。
ジェスのいちばん下の子、まだ生後10か月の娘が頭にケガを負って救急治療室に運ばれた。しかし診察でみつかった損傷にはジェスの説明とは食い違があり、虐待が疑われた。リズはジェスに寄り添い、何があったのかを探りだそうとするうち、彼女の子供時代の不幸な記憶が掘りおこされていく。
著者は《ガーディアン》紙で10年以上、医療から政治まで幅広い分野で記者をしていたジャーナリスト。作家に転向してこれが4作目。2018年に出した Anatomy of Scandal は《サンデー・タイムズ》他でベストセラーリストに登場し、TVドラマ化もされるとか。本作もヨーロッパを中心に各国語への翻訳が決まっているもよう。ぜひ日本語でも!
『Three Perfect Liars』 by Heidi Perks
カテゴリ:サスペンス
オフィスの火事の焼け跡からその会社のCEOの焼死体が見つかった。彼の死を願う動機を持った女性3人が浮かびあがる。
産休を終えて復帰したばかりのローラは、代用社員が居残っていることに驚いていた。CEOは会社のためにはそれが最善なのだと説明したが、ローラは納得していない。
ローラの産休中、彼女の仕事を引きついだミアは有能ぶりを見せつけ、人当たりの良さもあってCEOだけでなく社員たちからも引き止められるほどだった。しかし彼女がこの仕事を手放したくない理由を知られたら、歓迎してくれる人ばかりではないはず。
CEOの妻ジェイニーは法曹界でのキャリアをあきらめ、夫の事業をサポートすることに専念していた。彼女もまた人に知られてはいけない秘密をかかえている。
しかし3人とも、まさかこんなことになるとは予想もしていなかった。
女性が自分でこれと志した仕事をつづけていくことが難しいのはイギリスでもご同様らしい。この3人がどんなウソをついているのか、それを隠し通せるのかバレるのか、気になります!
著者自身は大学で小売経営学を学んでマーケティングの仕事についていたが、書くことと子育てに重心を移すことにしたのは外圧というより自身の判断だったようで、それはそれで幸せなことなのでしょう。家族の物語、とくにキャラクターの誰かが機能不全をおこしているような人間関係を書くことに興味があるとか。
そして最後はSF作品を。
『The Mother Code』 by Carole Stivers
カテゴリ:SF
時は2049年、細菌やウィルスを制するはずだった非ウィルス剤が暴走し、人類の敵となった。人類を絶滅から救うために科学者たちは全力を尽くすが、その最終手段はヒトの受精卵をコクーン型の人工子宮で培養し、機械によって育てさせるという計画だった。だが、人間という種を維持するためのもうひとつの手段も検討された。この子育てマシンに個別の知能プログラム――マザー・コード――を組み込むのだ。
アメリカ南西部の砂漠地帯で産まれたカイにとって、ロボットの〈ローZ(ロージー)〉だけが身内だった。ローZは人間の母親と同じようにカイを育て、教育した。ところが、カイのような子供たちがある程度の年齢になると、母親ロボットたちは想定外の方向へと変化をはじめた。政府はロボットを破壊することを決定し、カイたちは親子の絆を断ち切るかどうかの選択を迫られる。
まさにいま、ウィルスのせいで人間の暮らしが脅かされているときにこれを読まないでどうする? しかもスピルバーグの《アンブリン・エンターテインメント》がオプション契約したというからいずれ映像化されるかも? どうかするとAIというもの過剰に期待しがちな空気があるいま、知能とは、情とは、人間とは、ということを考えさせてくれそう。