つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2019年8月~

 

And Then They Were Doomed: A Little Library Mystery (English Edition)

And Then They Were Doomed: A Little Library Mystery (English Edition)

 

 

『And Then They Were Doomed』 by  Elizabeth Kane Buzzelli

シリーズ名:Little Library Mystery #4

カテゴリ: コージーミステリ

 

 アガサ・クリスティー・シンポジウムに招待された10人の作家のひとり、ゾーイ・ゾラは、招待されたことを喜ぶどころかツイてないとさえ思っていた。ゾーイの他、クリスティー研究者である他の招待客たちが会場となるホテルに集まり、開会を祝した夕食会が始まるなり、意見の食い違いから激しい言い争いがおきる。なかでも険悪な雰囲気を出していた男性客のひとりが翌朝、行方をくらました。

 この名高い作品そっくりに、それからもひとり、またひとりと招待客が姿を消していく。ゾーイは帰ろうとするが車の故障で動けず、友人で司書であり素人探偵でもあるジェニー・ウェストンに助けを求めた。折からの嵐で足止めされたジェニーを待つあいだ、ゾーイが生き残るにはクリスティーに関するあらゆる知識を総動員するしかない!

 

 ジェニーとゾーイは隣人同士。母が運営する私設図書館で司書をしているジェニーと、小人症という特性をもつ作家のゾーイがチームで事件解決にあたるシリーズ。これまではジョイス・キャロルやエミリー・サットン、ジェーン・オースティンといった作家にちなんだ設定をしてきて、4作目の今回はアガサ・クリスティーがテーマ。

 クリスティーのファンはどこでも「孤島」に集まってひと騒ぎしたくなるものなのかしらねぇ。

 

 

 

 

『The Perfect Wife』 by  J.P. Delaney

シリーズ名: ノンシリーズ

カテゴリ: スリラー

 

 長い昏睡状態から目覚めたアビーは記憶を失っていた。夫だという男性はテクノロジー業界の大物で、シリコンバレー随一のスタートアップ企業の創業者のひとり。彼によると、アビーは才能あふれるアーティストであり、サーフィンが大好きで、妻としても母としても完璧な女性だった。5年前にひどい事故にあって昏睡に陥ったが、革新的な技術開発により意識をとりもどしたのだ、と。

 だが、結婚生活の記憶を少しずつたどるにつれ、夫の言うことに疑問を持ちはじめるアビー。ずっと一緒にいようという夫の言葉はどこまで信じられるのか。5年前、いったいどんな事故があったというのか。

 

 ハヤカワ・ポケミスから『カルニヴィア』三部作が出ているジョナサン・ホルトの別名義による作品。ディレイニー名義では3作目となる。カルニヴィアの評判も良いし、ディレイニー名義の『The Girl Before』もロン・ハワードの監督で映像化される(2017)など、期待できる要素は十分。

 

 

 

Utopia 58 (English Edition)

Utopia 58 (English Edition)

 

 

『Utopia 58』 by  Daniel Arenson

シリーズ名:ノンシリーズ

カテゴリ:ディストピア

 

 ユートピア58。それは北アメリカの崩壊後に創設された理想の地。人種も性別も、年齢も区別されない、完璧な調和を達成した真に平等な世界。ここでは、人はみな平等でなければならない

 美しすぎるならマスクをつける。背が高すぎるなら足を短くする。男/女らしすぎる? 大丈夫、医者がちゃんと直してくれる。頭が良すぎる? 余計な考えは頭の中に鳴り響くブザーがかき消してくれる。誰もが等しい。突出するものはいない。

 KB209が生まれたのはそんな理想郷だった。名前も与えられない。過去も未来もない。大勢のうちのひとりに過ぎない彼は、ほかのみんなとまったく同じだった。

 ある日、彼は活動家たちが集会をしているところで、そんな社会に反旗をひるがえす衝撃的な光景を目にする。「わたしたちは人とは違う。わたしたちは個人だ。私たちは自由になる!」

 

 平等という言葉の解釈は難しい。それぞれに凸凹のあるひとり一人に、同じものを同じだけ与えるのが平等だということもあれば、その凸凹を均すようにそれぞれ違うものを与えるのだ平等だという場合もあるだろう。同じ「平等」という言葉で目指すものは多様であっていい。違いを認めない、というほどに「みなが同じ」になることは、はたして平等なのか、と問いかける本作は、エンタメというには重たそうだけど、エンタメというとっつきやすさを借りて多くの人の考えるきっかけになるといいな。

 

 

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