つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

気になる新刊 ~2019年3月~

 

 

Silent Bud Deadly by H.Y. Hanna

シリーズ名:English Cottage Garden Mystery #2

カテゴリ: コージーミステリ

 

 イギリスの片田舎にあるコテージをその庭園と茶トラのオス猫ともども相続したポピーだが、パンジーペチュニアの区別もつかないところからガーデニングを始めることになった。

 新天地での生活もようやく落ち着き、どうにか仕事も見つかったばかりだというのに、またしても近所で殺人事件が発生! いたってマイペースな隣人のニックをはじめ、一癖も二癖もある村人たちをかきわけて、真犯人をみつけられるのか?!

 

 Deadhead and Buriedに続くイングリッシュコテージガーデンを舞台にしたシリーズ2作目。作者は台湾出身で、オックスフォード大学卒業後、フリーランスのジャーナリストとして世界各地を飛び回りつつ、英語圏各地で短編や詩を発表し、賞をとった作品もあるそう。

 このシリーズのセールスポイントのひとつが「クリーン」であること。過激な暴力や性描写、汚い言葉がでてこない、ということ。それじゃものたりない、という人はどうぞスルーして。そういうものがなくても面白いミステリーであることがコージーの王道なわけで。

 

 

 

A Beautiful Corpse: A Harper McClain Mystery (English Edition)

A Beautiful Corpse: A Harper McClain Mystery (English Edition)

 

 

A Beautiful Corpse by Christi Daugherty

シリーズ名: Harper McClain Mystery #2

カテゴリ: サスペンス

 

 女性にとって、きみを愛していると言ってせまってくる相手に殺されることは珍しくもなんともない。

 風光明媚なことで知られるジョージア州サヴァナの一角で女性が殺された事件は街を震えあがらせたが、ハーパーには他人事ではすませられない事情があった。被害者の顔に見覚えがあったのだ。

 法律を学ぶ大学生ナオミ・スコットは、バーテンダーとして働きながら世界を変えることを夢見ていた。彼女が銃で殺されたとき目撃者はなく、警察が目をつけた容疑者は3人。過去に犯罪歴のあるボーイフレンド、別のバーテンダーを追いかけまわしていたことがある上司、以前ナオミと交際していた地方検事の息子。3人ともナオミを愛していた、と主張するが……?

 新聞社がリストラに乗りだし、失職の危機に面しながらも事件の真相を探るハーパーだが、彼女自身もまた見張られているような感覚におそわれる。

 

 作者は22才で新聞記者になったことで殺人事件を取材するようになり、ペンネームでYA作品をいくつか発表した後、The Echo Killingに始まる事件記者ハーパー・マクレインシリーズでミステリー作家デビューを果たした。

 1作目では、新聞記者となったハーパーが追っていた事件が、彼女が12才のときに惨殺された母親の事件とそっくりで、同一犯を疑って調査を進めた。観光客に大人気の上品な街に生まれ育ちながら、苦い思いを抱えて生きるヒロインの活躍に期待が膨らみます。

 

 

 

The Women's War (English Edition)

The Women's War (English Edition)

 

 

The Women’s War by Jenna Glass

シリーズ名:The Women’s War #1

カテゴリ:ファンタジー

 

 高貴な人々にとって、なによりもまず果たすべき使命が「世継ぎたる男児を得ること」であった場合、女性は男性の所有物であり、交渉のための駒として扱われがちだ。だが、世界を揺るがした魔法の余波が人の体にも文化にもしみわたるにつれて、女性たちは自ら交渉権を手に入れる。

 国王の娘でありながら相続権をもたないアリスは、10代の子供2人を残して夫に先立たれていた。王国内では彼女は存在しないに等しい扱いを受けていたが、この魔法の余波によって、これまで男のものとされてきた政治と魔法について、非凡な才能が芽生えたことに気づく。

 隣国では、国王をはじめ王位継承権者が次々と命を落としたため、そんなことをまったく想定していなかった王の孫娘エリンが王座につくことになった。誰もが当然のごとく、彼女が早々に結婚して夫に王座を明け渡すだろうと考えたが、エリン自身には別の考えがあった。

 家父長制度を脅かす魔法を女性たちが身につけたとき、権力を失うまいと必死の男たちとの戦いが始まる。

 

 

 作者のジェナ・グラスは米デューク大で自然人類学を学んだが、霊長類研究への情熱を創作へと方向転換し、ジェナ・ブラック名義でYAやロマンス作品を発表してきた。本作がJ・グラス名義でのデビュー作となる。

 女性だけが特別な力を得て男女の力関係が逆転するという設定はナオミ・オルダーマン『パワー』でも見られたが、舞台が近未来のアメリカとファンタジー世界とではまた男女の格差の重みも違い、ファンタジー世界ならではのダイナミックな戦いが期待できそう。

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