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『Guidebook to Murder』 by Lynn Cahoon

 

Guidebook to Murder (A Tourist Trap Mystery)

Guidebook to Murder (A Tourist Trap Mystery)

 

 

キャラクター      ★★★

プロット              ★★★★

総合満足度          ★★★

カテゴリ              書店、リゾート地、

 

 ジル・ガードナーは5年前にカリフォルニアの海岸の町サウスコーヴにやってきて、カフェ併設の書店〈コーヒー、ブックス、アンド・モア〉を経営している。離婚後の癒しを求めて訪れたこの地で親切にしてくれた老婦人エミリーと意気投合し、ここに住むことにしたのだ。

 エミリーの家は老朽化がすすんでいるとはいえ、手入れしながらまだまだ住むつもりでいるというのに、町は再開発のために立ち退かせようとしている。その強引なやり方にジルもいっしょに抗議しようとしていた矢先、エミリーが突然死した。しかも、息子に先立たれていたエミリーは家を含めかなりの財産をジルに遺していた。

 エミリーは殺されたものと確信したジルは、家のリフォームを急いで進める一方で、犯人捜しを始める。

 

 

 主人公のジルは弁護士をしていたようなのだけど、そのわりにエミリーが直面している法的な問題に対してのアドバイスがまだるっこしいのはなんでだろう? と思わずにいられない。弁護士といっても専門がいろいろとあって専門外のことには意外と疎いものらしいということは知っているけど、それにしても……という印象がちょっと残念。

 エミリーが亡くなった後、相続した古い家を取り壊されないようにするためには、町側の弁護士が送り付けてきた手紙で指定された条件に従って、月末までに道路との境界にあるフェンスを直したり、外壁を塗りなおしたりしなければならない。それぞれに業者の手配をして作業をすすめるには、自分の店をやりながらではとても時間が足りない。そこで、すでに引退して悠々自適の生活をしている伯母ジャッキーを呼び寄せて店のほうを任せることにしたのはいいが、カフェ経営の経験豊かなジャッキーは、相談もないまま、よかれと思って改善策をすすめたりするのがジルにはストレスだ。

 捜査に当たるのはグレッグ・キング刑事。ジルはときめきを感じるけれど、どうやら結婚しているらしいと知って気持ちが揺れるのはお約束通り。ジルとしては不倫なんてもってのほかなのに、なぜかグレッグのほうは積極的。捜査に首をつっこまないようにけん制するだけでなく、ジルが次の被害者にならないようにするという名目のもとに何かといっしょにいようとするし、世話を焼いてくれるのがジルには悩ましい。(読者にしてみれば、どうせ別居中だったりするんでしょ、ってとこですが。)

 事件のほうは、エミリーの甥夫婦があからさまに財産を欲しがって権利を主張してきたり、強引な開発業者がいかにもな言動をしてくるのがうざかったり。容疑者には事欠きません。エミリーの家自体はオンボロだけど、かなりの金融資産があるのと、実はエミリーに絵の才能があって商業的に高値で売れるほどの作品をいくつも残したことなども強欲な犯人の動機としてあしらわれていて、わかる人には犯人の見当はついてしまいそうだけど、それなりに楽しめる作品にはなってます。

 

 

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