Forget Me Knot (A Quilting Mystery)
- 作者: Mary Marks
- 出版社/メーカー: Kensington
- 発売日: 2014/01/07
- メディア: Kindle版
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『Forget Me Knot』 by Mary Marks
キャラクター ★★★★
プロット ★★★★
総合満足度 ★★★★
カテゴリ キルト、ユダヤの習慣、中高年女性、社会的弱者、
キルトという言葉から日本人がイメージするものには、けっこう幅がありそうな気がする。決まったパターンに布を並べてつないだベッドカバーだったり、草花や小鳥のアップリケだったりを基本として、生地屋さんで売っている「キルティング生地」を思い浮かべる人もいるだろうけど、絵の具の代わりに布で描く絵画のような作品があって展示会なども行われているのを知っている人ってどのくらいいるものなのだろう? 日本でも定期的にキルトショーは開かれているけど、知らない人は知らない世界かも。
アメリカでは、開拓時代に布を無駄にしないために作られたものが今ではアンティークとして高値がついたりもしている一方、同じように家族のために作られ使い倒される実用品のほかにアート作品としての新作もどんどん作られている。デザインや配色がみごとだったり針目がそろっていたりするものは芸術作品としての評価も高い。
マーサ・ローズは、友人のルーシー、バーディと週1回あつまっていっしょにキルティングをするのを楽しみにしている。恒例のキルトショーが近づいたその日は、何度も金賞をとっているスター的存在のキルター、クレア・テリーも来てくれることになっていた。ところが3人が迎えに行ってみると、クレアは自宅のキッチンであおむけに倒れて死んでいた。
お悔やみを告げにクレアの実家を訪れたマーサは、クレアが自分のキルトに縫いこめたという「物語」を読み解いてくれと母親に頼まれる。絵画のようなキルトには、装飾的な効果を狙って刺繍を施すことがあるが、クレアもその手法を多用していて、なかでもフレンチノットという小さな玉止めみたいなものをたくさん並べている。視覚障害をもつ子供の支援団体にクレアが多額の寄付をしていたことから、細かなフレンチノットが点字になっていることに気づいたマーサが解読した「物語」は、おぞましくも悲しいものだった――。
裕福だけれどいびつな家庭に育ったクレアに対して、不完全ながら愛情を感じられる家庭で育ったマーサが心を寄せていく。事件が片付いた後に改めて自らの出生のいきさつを知ったマーサが家族のきずなを確認する場面はとても感動的。「マーサ、おまえにはただ、普通の人生を送り、幸せになってほしかったんだよ」