つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~

積ん読は積ん徳。駆け出し翻訳者が毎月「コレ読みたい!」新刊本を紹介しています。ミステリ全般、コージーミステリ、SF&ファンタジーを中心に。

手を動かしながらおしゃべりする仲間と時間があるって最高だ

 

Forget Me Knot (A Quilting Mystery)

Forget Me Knot (A Quilting Mystery)

 

 

『Forget Me Knot』 by Mary Marks

キャラクター      ★★★★

プロット              ★★★★

総合満足度          ★★★★

カテゴリ              キルト、ユダヤの習慣、中高年女性、社会的弱者、

 

 キルトという言葉から日本人がイメージするものには、けっこう幅がありそうな気がする。決まったパターンに布を並べてつないだベッドカバーだったり、草花や小鳥のアップリケだったりを基本として、生地屋さんで売っている「キルティング生地」を思い浮かべる人もいるだろうけど、絵の具の代わりに布で描く絵画のような作品があって展示会なども行われているのを知っている人ってどのくらいいるものなのだろう? 日本でも定期的にキルトショーは開かれているけど、知らない人は知らない世界かも。

 

 アメリカでは、開拓時代に布を無駄にしないために作られたものが今ではアンティークとして高値がついたりもしている一方、同じように家族のために作られ使い倒される実用品のほかにアート作品としての新作もどんどん作られている。デザインや配色がみごとだったり針目がそろっていたりするものは芸術作品としての評価も高い。

 

 マーサ・ローズは、友人のルーシー、バーディと週1回あつまっていっしょにキルティングをするのを楽しみにしている。恒例のキルトショーが近づいたその日は、何度も金賞をとっているスター的存在のキルター、クレア・テリーも来てくれることになっていた。ところが3人が迎えに行ってみると、クレアは自宅のキッチンであおむけに倒れて死んでいた。

 

 お悔やみを告げにクレアの実家を訪れたマーサは、クレアが自分のキルトに縫いこめたという「物語」を読み解いてくれと母親に頼まれる。絵画のようなキルトには、装飾的な効果を狙って刺繍を施すことがあるが、クレアもその手法を多用していて、なかでもフレンチノットという小さな玉止めみたいなものをたくさん並べている。視覚障害をもつ子供の支援団体にクレアが多額の寄付をしていたことから、細かなフレンチノットが点字になっていることに気づいたマーサが解読した「物語」は、おぞましくも悲しいものだった――。

 

 裕福だけれどいびつな家庭に育ったクレアに対して、不完全ながら愛情を感じられる家庭で育ったマーサが心を寄せていく。事件が片付いた後に改めて自らの出生のいきさつを知ったマーサが家族のきずなを確認する場面はとても感動的。「マーサ、おまえにはただ、普通の人生を送り、幸せになってほしかったんだよ」

 

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気になる新刊 ~2017年7月(その2)~

今月は1作目を読んで続きも読みたいと思ったシリーズの新刊がぞくぞくと出ていて、悩ましい限りです。はやく追いつきたい・・・・(*´▽`*)

 

Muffin to Fear (A Merry Muffin Mystery)

Muffin to Fear (A Merry Muffin Mystery)

 

 

 

『Muffin to Fear』 by Victoria Hamilton

シリーズ名:Merry Muffin Mystery #5

カテゴリ:お菓子レシピ、古城、ゴーストハンター、

 

メリーが自分の結婚式の準備で大わらわだというのに、親友ピッシュはウインター城に幽霊がいることを明らかにしようとテレビ番組の取材を要請。ところがやってきた番組スタッフはどうにも息が合わない、というより反目しあって口論が絶えないようす。番組が製作できるのが奇跡に思えるほどだ。

 

スタッフが連れてきた霊能力者がここで殺された人と接触したと言い出すと、事態はさらに悪い方向へ。出演者がふたりも死体で発見されるにいたっては、一日でもはやく犯人を見つけなければ結婚式どころじゃないってば!

 

 主人公メリー・ウインターは、ほとんどつきあいのなかった大叔父からウインター城を相続したのをきっかけに、ニューヨークでのスタイリストの仕事をやめ、得意のマフィン作りで商売を始めることにした。

 スタイリスト時代からの親友でモデルをしていたピッシュもなぜか同居することに。複数飼いの猫たちが駆け回る広いお屋敷を舞台に、一見華やかな業界の人たちも出入りする本シリーズは注目しています。

 

期待度:★★★★

 

 

A Toast to Murder (Mack's Bar Mysteries)

A Toast to Murder (Mack's Bar Mysteries)

 

 

『A Toast to Murder』 by Allyson K. Abbott

シリーズ名:Mack’s Bar Mystery #5

カテゴリ:バー、カクテルレシピ、素人探偵団、

 

ミルウォーキーの下町にも年末はやってくる。〈マックス・バー〉のオーナー、マッケンジーが新年に願うのはただ一つ、バーの用心棒ゲイリーを殺した犯人を捕まえること。バーの常連客たちからなる素人探偵団は招待客限定のパーティを企画して被疑者を誘いこんだはいいけれど、当の相手が冷たくなって見つかるとなると話は違ってくる・・・?

 

 主人公のマックことマッケンジーは“共感覚”の持ち主。五感への刺激が互いに混線して、においに色や音がついていたり、音に味を感じたりしてしまう。その特殊能力を活かして警察の捜査に協力しているマック。もともとは父が経営していたバーを受け継いだマックが殺人事件に出くわすたびに、父のころからの常連客たちもそれぞれの得意分野で事件解決に協力してくれている。そういう仲の良いもの同士の居心地のよさと、新規客もフレンドリーに迎え入れる雰囲気のバーには自然と人が寄ってくるということか。

 

期待度:★★★★

 

Wrong Side of the Paw (A Bookmobile Cat Mystery)

Wrong Side of the Paw (A Bookmobile Cat Mystery)

 

  

『Wrong Side of the Paw』 by Laurie Cass

 シリーズ名:Bookmobile Cat Mystery #6

カテゴリ:移動図書館、猫、

 

今日も今日とて管内をめぐる移動図書館には看板猫のエディが乗りこんでいる。いつもはおとなしく利用客に愛嬌を振りまいている彼がひょいと飛び出していったら、それは死体発見のサイン? 今回エディが見つけたのは通りすがりのピックアップトラックの荷台に寝かされた死体。当然、運転していた地元の弁護士が疑われたわけだが、図書館員の性(さが)として、ミニーはもっと詳しく調べてみないことには納得できない・・・。

 

 田舎の町にも公立の図書館があるのはよいことだけど、難点があるとすれば遠いこと? 広大な地域にぽつりぽつりと人が住んでいるような場所では、移動図書館が巡回してくれるほうがありがたいもの。ましてや、かわいい猫が乗りこんでいるとあれば子供たちは大喜び。湖に浮かぶボートハウスでの暮らしぶりもなかなかに興味深いシリーズです。

 

期待度:★★★

 

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三姉妹探偵団、始動します。

 

The Sleuth Sisters (The Sleuth Sisters Mystery Book 1) (English Edition)

The Sleuth Sisters (The Sleuth Sisters Mystery Book 1) (English Edition)

 

 

『The Sleuth Sisters』 by Maggie Pill

 

キャラクター      ★★★★

プロット              ★★★

総合満足度          ★★★★

カテゴリ              私立探偵、三姉妹、

 

 キンドル版を無料で入手した1冊。キンドルの洋書はキャンペーン的に時々無料になっていたりするけれど、読んでみるとハズレであることもじつは多い。そうでもしないと続きが売れないようなシリーズ、という事情もあるのだろうが。

 

 なので、あまり期待せずに読み始めた作品ながら、これはなかなか面白く読めました。主役となる三姉妹はそれぞれに個性的で、過去にはケンカもすれば行き違いもあったかもしれないけど、まずまず仲の良い姉妹だというのは安心して読める要素ではないかと思います。

 

 弁護士の職を52才で早期退職したバーブは、故郷のミシガン州に戻って探偵業を始めることにした。強く勧めたのはすぐ下の妹フェイ、50才。ケガのせいで働けなくなった夫を支えながらいろんな仕事をして息子3人を育て上げたが、ここへきて失業。「自分が自分のボスになる」ため、独身で子供もいないバーブの財力を活かしてビジネスを始めよう、というわけだ。

 

 〈スマート探偵事務所〉に初めての事件らしい事件を依頼してきたのは、行方不明の兄を探しだして無実を証明してほしいというメレディス・ブラウン。ニール・ブラウンは6年前、身重の妻カリーナとその兄を殺して逃亡したとされていた。石材業で財を成した創業家の令嬢だったカリーナと建築請負業のニールの格差婚を苦々しく思っていたカリーナの父が現場から走り去るニールを見たと証言し、警察もニールを犯人と決めつけたのだ。

 

 まずは逃走経路をたどってニールを探し出そうとするバーブとフェイ。まだまだ素人なのでずいぶんとドタバタな追跡だが、途中からは末っ子のレッタもこっそりと捜査に加わり、殉職警官の妻という立場をうまく利用して警察側の情報も集めたりして、3人はしだいに真相に近づいていく。

 

 ところで、読書好きなら日々の生活の中で目や耳にする言葉というものに敏感になりますよね。じつは長女のバーブ、文法やスペルの間違いが気になってしかたないタイプ。町中で目にした看板などに間違いを見つけると、それを訂正したくて居ても立っても居られない。ペンキと刷毛を車のトランクに常備していて、夜になると全身を黒い服に包み、こっそり「お直し」をしてあげるし、新聞記事に間違いを見つければそれを投書で指摘せずにはいられません。身近にいればメンドクサイかもしれないけれど、50過ぎのおばちゃんがイタズラがうまくいったとほくそ笑んでいるのはカワイイといえなくもない……かも?

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【気になる新刊】2017年7月(その1)

 

Lions and Tigers and Murder, Oh My (Devereaux's Dime Store Mystery)

Lions and Tigers and Murder, Oh My (Devereaux's Dime Store Mystery)

 

 

『Lions and Tigers and Murder, Oh My』 by Denise Swanson

 

シリーズ名:Devereaux’s Dime Store Mystery #6

カテゴリ:ダイムストア、ギフトバスケット、二股愛、

 

私立探偵として新たなスタートを切ることになった恋人ジェイクの事務所として、自分の店の2階を貸すことになったデヴは、さっそく事件に巻き込まれていく。

町のはずれで動物公園を開園しようとしていた慈善家のエリオット・ウィンストンだが、町の住民ばかりか妻のガブリエラにまで反対されている。盛大に夫婦喧嘩をしたあとで行方不明になった妻が死体となって見つかると、当然疑われたのは夫のエリオット。しかしデヴにはなっとくできないことが……。

 

 投資顧問会社の仕事をとある事情から辞め、祖母の世話をするために故郷にもどり小さな雑貨店を買い取ったデヴロー(デヴ)を主人公とするシリーズ。

 恋人のジェイクは連邦法執行官代理という肩書で登場したものの、FBIとか麻薬取締とか、あるいは税務調査関係などなのかは明かされなかった。本作ではその国家公務員を退職したらしく、私立探偵業を始めるようだ。1作目からしばらくは幼馴染で医者のノアとも十代の恋愛ごっこが再燃したりしていたが、本作ではジェイクのほうに傾いてるのかな?

 父は冤罪で長らく服役し、母はそんな父に愛想をつかして家出してしまったのがデヴが16歳のころ。4、5作目あたりでその両親が戻ってきたりして一波乱あったもよう。デヴの家族関係が彼女の内面や交際にどう影響してくるのか、ますます目が離せません。

 

期待度:★★★★★

 

Sowed to Death (Farmer's Daughter Mystery)

Sowed to Death (Farmer's Daughter Mystery)

 

 

『Sowed to Death』 by Peg Cochran

 

シリーズ名:Farmer’s Daughter Mystery #2

カテゴリ:農場、子育て、ブログ、

 

子育てしながら日々農場経営に奮闘するシェルビー・マクドナルドは、「ファーマーズ・ドーター」というブログで食と農業に関する情報を発信している人気ブロガー。毎年恒例のカントリーフェアにはジャムなど出品する予定だが、祭りの呼び物はなんといってもトラクター競技などの派手なものだ。

 

もう一つの目玉がジョーズ・オブ・ライフという装置を使った救出作業のデモンストレーションだ。シェルビーの隣人で消防団ボランティアのジェイクが実演することになっていたが、仕込まれていたのはダミーではなく本物の人間、それもジェイクと仲の悪かったジークだったため、ジェイクが疑われてしまう。

 

 コージーミステリでは比較的少数派の、既婚で子持ちの女性が主人公。なので、主人公の恋模様にハラハラドキドキ、というのは期待できないものの、子供たちがティーンエイジャーとあって思春期の子供の扱いにくさや彼らの進路なども今後の話題として登場するかも? 

 そしてシェルビーが人気ブロガーというのもいかにもイマドキらしく、各章の冒頭にはそのブログの記事の体裁でレシピやガーデニングのコツなどが紹介されるのも興味深いスタイル。

 

期待度:★★★★★

 

 

 

Addressed to Kill (A Postmistress Mystery)

Addressed to Kill (A Postmistress Mystery)

 

 

『Addressed to Kill』 by Jean Flowers

 

シリーズ名:Postmistress Mystery #3

カテゴリ:郵便局

 

バレンタインデーが近づき、町の住人たちはシニアセンターでのディナー&ダンスの夕べに期待を膨らませている。地元のバンドのメンバーたちに、いつもの練習場所が使えなくなったと泣きつかれたキャシー・ミラーは、営業時間外ならと条件付きで自分が局長を務める郵便局を使わせることに同意した。

ところが、バンドメンバーの一人が自宅で撃ち殺されているのが見つかると、キャシーはこのところ続いている侵入事件との関連があるのでは、と疑って調査を始める。

 

 ボストンの郵便局で管理職まで務めたが、傷心を癒すために故郷の郵便局に移ってきたキャシー。アメリカの郵便局は、田舎のほうでは局長ひとりでやってるようなところもあるようで、かなり融通が利くみたいですね。〈トラ猫ミセス・マーフィ〉シリーズでも郵便局長が主人公で動物たちを連れてご出勤してましたっけ。

 メールの普及で手紙・はがきの利用がめっきり少なくなっている事情は日本もアメリカも変わらないとはいえ、小さな田舎町では郵便局は人が行き交う場所のひとつ。外部との窓口でもある郵便局が舞台になっているこのシリーズ、どんな人が騒ぎを巻き起こすのかが見どころか。

 

期待度:★★★

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【気になる新刊】2017年6月(その2)

 6月発売の新刊紹介、第2弾です。

新しいシリーズも次々と登場するのでなかなか追い付けませんが、気になるものはとりあえずチェックしないとね。

 

Bad Housekeeping: An Agnes and Effie Mystery (An Agnes & Effie Mystery)

Bad Housekeeping: An Agnes and Effie Mystery (An Agnes & Effie Mystery)

 

 『Bad Housekeeping』 by Maia Chance

シリーズ名:Agnes and Effie Mystery #1

カテゴリ:B&B

 

ピラティスのインストラクターに大学教授の恋人を取られ、人生設計の見なおしを迫られたアグネス・ブライス(28)は、大おばエフィの頼みで〈ステージコーチ・イン〉の経営立て直しに協力することになった。ところがその直後、ついこのあいだ口論したばかりのキャスリーン・トッドが死体で見つかり、ふたりそろって容疑者になってしまった。誰かにはめられたのは明らかなのに、だれも信じてくれず、まともな捜査もしてくれない――となれば自分たちで真犯人を見つけなければ!

 

 家族経営の小さなオンボロB&Bを舞台に、ちょっと変わり者の大おばとコンビを組むアグネスの奮闘やいかに。カーチェイスや銃撃戦もあるらしいけど、もちろんコージーのなかでのこと、息をのむような、というよりはドタバタ喜劇風?

 

期待度:★★★

 

 

Booked 4 Murder (Sophie Kimball Mystery)

Booked 4 Murder (Sophie Kimball Mystery)

 

『Booked 4 Murder』 by J.C.Eaton

シリーズ名:Sophie Kimball Mystery #1

カテゴリ:

 

田舎町の警察署で会計係をしているシングルマザーのソフィー(フィー)・キンボールだが、呪われた本の謎を解いてくれという母ハリエットに呼ばれてはるばるアリゾナまで向かうことに。ハリエットによると、ブッククラブのメンバーがすでに4人も不審な死を遂げたというのだ。呪われた本なんてあるはずがないと思いながらも調査を進めるうちに、隠されていた秘密が明らかになってくる。

 

 シングルマザーとはいえすでに子供は大学生。子育てからも解放されて自分の人生を楽しむはずのソフィーをやっかいごとに巻き込むのは(やっぱり?)母親、と相場は決まっている。警察署に勤めているというだけで捜査にかかわったこともないのに、事件を解決できるのは「アンタしかいない!」とばかりグイグイ押してくる母はコージーの鉄板か。

 

期待度:★★★★

 

 

Treble at the Jam Fest (A Food Lovers' Village Mystery)

Treble at the Jam Fest (A Food Lovers' Village Mystery)

 

 『Treble at the Jam Fest』 by Leslie Budewitz

シリーズ名:Food Lover's Village Mystery #4

カテゴリ:食料品店、高級食材、

 

食料品店〈グレイシア・マーカンタイル〉のマネージャー、エリン・マーフィーは毎年恒例のジャズフェスティバルの準備に大忙し。品切れのないように商品を並べる合間に、コンサートの司会のことも考えなくちゃならない。そんなときに事件は起きた。出演予定のジャズギタリストが川に落ちて死んだのだ。どうやらフェスのスタッフや共演者たちとうまくいっていなかったらしいが、これは事故なのか、それとも?

 

 シリーズ1作目の『Death al Dente』は2013年度のアガサ賞処女長編賞を受賞。カナダと国境を接するモンタナ州を舞台に、家族経営の食料品店を切り盛りするエリンを中心に、個性豊かなキャラたちが盛り上げてくれそうで楽しみなシリーズ。

 

期待度:★★★★

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【気になる新刊】2017年6月(その1)

 

Once Upon a Spine (Bibliophile Mystery)

Once Upon a Spine (Bibliophile Mystery)

 

 

シリーズ名:Bibliophile Mystery #11

カテゴリ:希少本、サンフランシスコ、

 

 希少本の専門家で製本業もこなすブルックリンのもとへ、将来の義家族となる人たちがイギリスからやってくることになった。それだけでも十分いらいらするのに、通りのむこうにあるコートヤードのかわいらしいお店たちが高層マンションに建て替えられるといううわさまで伝わってきた。店のオーナーたちを説得して売られてしまわないようにしないと、せっかくのおしゃれな街並みが台無しにされてしまう。

 

 ところが、〈ブラザーズ・ブックショップ〉で『不思議の国のアリス』の稀覯本がトラブルをひきおこし、ちょっとした破壊行為がいくつかつづいたおかげで皆が不安になってくると、ブルックリンと婚約者のデレクにはとうてい手におえないような気がしてきた。そんな時に、ジュースバー〈ラビット・ホール〉のオーナーが重たい棚の下敷きになり、しかもそのとなりには靴屋も死んで横たわっていた。ただの事故なのか、それとも……? さらに、2冊目の高価な『アリス』の本が見つかり、事態はますますおかしなことになっていく。強いきずなで結ばれたコミュニティに、この上まだトラブルは続くのか?>

 

 イギリスからの一行がやってきてみると、彼らはそれほど堅苦しい人たちではないことがわかってブルックリンはほっとする。デレクの父はチョコレートクリームパイでメロメロになるし、霊能力がある母はブルックリンが事件を解決するためならなんでもするという意気込みだったが、ついには次の犠牲者が出て……。

 

 初版本などの稀覯本を修復するのが主人公の仕事とあって、有名どころの本の数々が登場するシリーズ。これまでに『ファウスト』『カーマ・スートラ』『美女と野獣』『アメリカの鳥類』などが取り上げられているもよう。

期待度:★★★★

 

 

The Trouble with Harriet: An Ellie Haskell Mystery

The Trouble with Harriet: An Ellie Haskell Mystery

 

 

シリーズ名:Ellie Haskell Mystery #8

カテゴリ:インテリアデコレーター、

 

 エリー・ハスケルと夫のベンは数年ぶりのバカンスに出かけることにした。荷造りもできたし、飛行機の予約もばっちり、ロマンティックなフランス旅行へレッツゴー!――と思ったら、占い師に「命がけになるよ!」と不吉な予告をされて怪しい雲行きに……。最愛のハリエットの突然の死に打ちひしがれたエリーの父、モーリーが突然あらわれたのだ。

 

 おかしな出来事がつづいたあげくにモーリーがハリエットの骨壺をなくしてしまうと、ハリエットの家族は怒り心頭。巻き込まれたエリーも詮索してまわることに。あの骨壺に入っていたのは誰? ていうか、何? モーリーは捨て駒なの? だいたいあの予言は何を意味していたの? 真相がわかるまで生きていられればいいのだけど……。

 

 90~00年代に発表されたシリーズのうち、飛び飛びに復刊しているものの1つ。今回は旅行先が舞台になるようだから、メインの二人以外の登場人物たちの関係などを気にせず読めるかも。

期待度:★★★

 

A Crime of Passion Fruit (Bakeshop Mystery)

A Crime of Passion Fruit (Bakeshop Mystery)

 

 

シリーズ名:Bakeshop Mystery #6

カテゴリ:ベーカリー、オレゴン州、レシピ付き、

 

 ジュリエット(ジュール)・キャプショウは、実家のベーカリー〈トルテ〉を、地元の小さなお菓子屋さんからペストリー王国に変身させようと奮闘中。ところが別居中の夫カルロスは、彼のクルーズ船に乗り込んで自慢のスイーツをふるまってほしいと食い下がってくる。船上暮らしはもうたくさん、と思ういっぽうで、費用相手もちで旅行ができるなら……という下心もなくはない。もしも日程の中に「死体」が盛り込まれていると前もって知ってさえいれば……。

 

 お菓子作りの合間にはデッキでトロピカルドリンクを楽しむはずが、もうそれどころじゃない。被害女性を知っている乗客がいないのはどうして? 犯人がこの中にいるとわかっているのに客を落ち着かせるにはどうすればいい? ネズミじゃなくたって逃げ出したいわよ!

 

 オレゴン州アシュランドを舞台にしたシリーズ。この町は「オレゴンシェークスピア・フェスティバル」で有名だそうで、シリーズ1作目ではまさにそのフェスティバルの最中の事件を扱っています。

 

期待度:★★★★

 

 

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『Guidebook to Murder』 by Lynn Cahoon

 

Guidebook to Murder (A Tourist Trap Mystery)

Guidebook to Murder (A Tourist Trap Mystery)

 

 

キャラクター      ★★★

プロット              ★★★★

総合満足度          ★★★

カテゴリ              書店、リゾート地、

 

 ジル・ガードナーは5年前にカリフォルニアの海岸の町サウスコーヴにやってきて、カフェ併設の書店〈コーヒー、ブックス、アンド・モア〉を経営している。離婚後の癒しを求めて訪れたこの地で親切にしてくれた老婦人エミリーと意気投合し、ここに住むことにしたのだ。

 エミリーの家は老朽化がすすんでいるとはいえ、手入れしながらまだまだ住むつもりでいるというのに、町は再開発のために立ち退かせようとしている。その強引なやり方にジルもいっしょに抗議しようとしていた矢先、エミリーが突然死した。しかも、息子に先立たれていたエミリーは家を含めかなりの財産をジルに遺していた。

 エミリーは殺されたものと確信したジルは、家のリフォームを急いで進める一方で、犯人捜しを始める。

 

 

 主人公のジルは弁護士をしていたようなのだけど、そのわりにエミリーが直面している法的な問題に対してのアドバイスがまだるっこしいのはなんでだろう? と思わずにいられない。弁護士といっても専門がいろいろとあって専門外のことには意外と疎いものらしいということは知っているけど、それにしても……という印象がちょっと残念。

 エミリーが亡くなった後、相続した古い家を取り壊されないようにするためには、町側の弁護士が送り付けてきた手紙で指定された条件に従って、月末までに道路との境界にあるフェンスを直したり、外壁を塗りなおしたりしなければならない。それぞれに業者の手配をして作業をすすめるには、自分の店をやりながらではとても時間が足りない。そこで、すでに引退して悠々自適の生活をしている伯母ジャッキーを呼び寄せて店のほうを任せることにしたのはいいが、カフェ経営の経験豊かなジャッキーは、相談もないまま、よかれと思って改善策をすすめたりするのがジルにはストレスだ。

 捜査に当たるのはグレッグ・キング刑事。ジルはときめきを感じるけれど、どうやら結婚しているらしいと知って気持ちが揺れるのはお約束通り。ジルとしては不倫なんてもってのほかなのに、なぜかグレッグのほうは積極的。捜査に首をつっこまないようにけん制するだけでなく、ジルが次の被害者にならないようにするという名目のもとに何かといっしょにいようとするし、世話を焼いてくれるのがジルには悩ましい。(読者にしてみれば、どうせ別居中だったりするんでしょ、ってとこですが。)

 事件のほうは、エミリーの甥夫婦があからさまに財産を欲しがって権利を主張してきたり、強引な開発業者がいかにもな言動をしてくるのがうざかったり。容疑者には事欠きません。エミリーの家自体はオンボロだけど、かなりの金融資産があるのと、実はエミリーに絵の才能があって商業的に高値で売れるほどの作品をいくつも残したことなども強欲な犯人の動機としてあしらわれていて、わかる人には犯人の見当はついてしまいそうだけど、それなりに楽しめる作品にはなってます。

 

 

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